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松本大策のコラム
シコリのお話 その2~正しい皮下注射の打ち方~

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2019年4月1日

 ごめんなさい。間隔が開きすぎましたが、前回(3月18日)のコラムで、「シコリ(脂肪置換症)は注射の打ち方が間違っているために起こります」という、ちょこっと衝撃的(?)な事を書きました。実際に現場で注射痕を出荷まで追っかけてみたところ、「カブリシコリ僧帽筋の脂肪置換症」」になっているというケースをたくさん経験しています。
 それだけに私たち獣医師も注射を打つ場合には、目の前の牛さんが「他人様の資産」であり、なおかついずれ「大切な食料」になってくれることを肝に銘じて丁寧に細心の注意を払わなければならないと、診療所でも気を引き締めている次第です(シェパードのスタッフは、そういう荒っぽい注射は打たないように最初にしっかり訓練しますけどね)。

 カブリなどの筋肉は、改めて言うまでも無く「食品」です。可能な限り筋肉注射は避けて、皮下注射にした方がよいです。しかし現場で見ていると、そこをいい加減にして、筋肉注射にしたいのか皮下注射にしたいのか、どうでもよいような注射をしているのを見かけます。そして薬剤によっては、その注射のせいでひどいシコリ(硬結)になっています。

 まずはポンプ(注射器)の握り方からしっかり考えましょう。

 これはダメな握り方です。鉛筆みたいに握るやり方!これでは、針先のコントロールが出来にくい上に、牛さんが動いたときの力でポンプが壊れたり針が折れたりすることもありますし、牛さんが動いたときに刺した部分の組織を傷つけてしまうのです。

 ポンプは必ずこのように、針の根元を持つようにします。注射の部位は肩甲骨の前縁(図の青線で囲ったあたり)です。

 そして、消毒綿で十分注射する部位を消毒してから(ここを省略しちゃダメ!感染を引き起こすと炎症を起こし、シコリを作りやすくなりますからね)、ポンプを持っていない皮の指で注射部位の皮膚をつまみます。つまんだ部分の根元に注射針を刺します。

 針先を持っている親指で、反対側の手で引っ張っていた皮膚を針と一緒にしっかりつまんで針先が確実に皮下にあるように引っ張ります。

 ここまで来たら注射は終わったも同然です。牛さんが動いても筋肉組織を傷つける心配もありません。後は、ポンプの内筒を引っ張って血液などが入ってこないことを確かめたら薬液を注入するだけです。

 コンサル先のスタッフにも、この方法を進めてからシコリが出なくなった事例がたくさんあります。

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