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蓮沼浩のコラム
第555話:やっぱり初乳は大事です

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2019年2月7日

 本当に今年の冬、鹿児島県は暖かいですね。いつもはもう少し寒かったような気がするのですが。水温が高いので家の金魚の動きが活発です。それにしても、伝染病は恐ろしいですね。現場の最前線の獣医師として身が引き締まる思いです。

 子牛の治療をしていると、治りが悪い事例があります。このような場合は速やかに血液検査を実施するのですが、大抵総タンパクとヘマトクリットと血色素の数値が低いことが多いです。ひどい個体になると、白血球数が跳ね上がりBUNという尿素窒素の数値も上がります。

 子牛には生理的貧血というものがあり、出生子牛のヘマトクリットと血色素が低い個体がでることもありますが、やはりこのような個体は病気が治りにくい傾向があります。シェパードでは貧血が認められる個体には積極的に輸血を実施しています。

 総タンパクが低い個体は、基本的には初乳の摂取不足と判断します。そして大腸菌などの病原性微生物に感染することで、白血球数が上がり、さらには腎臓にもダメージがでると、治療はさらに難しくなってきます。

 このような子牛を治療する時に聞き込みをすると、あまり初乳を飲めていない事例があります。基本的なことですが、分娩後すぐに子牛が立ちあがり、元気に親の初乳をしっかりと飲めるような管理というものは非常に重要ですね。そして、何か問題があり、子牛が十分に初乳を飲めていない可能性がある場合は、初乳製剤などの力を借りるだけではなく、徹底的に環境消毒等の衛生対策と保温などをしっかりと実施し、子牛が少しでも病原性微生物に暴露されず、元気にいられるようにしてあげることが重要ですね。

 分娩後に肋骨骨折や初乳摂取が十分にできていないなどの問題があり、にスムーズにスタートが切れなかった子牛には最初はとにかく治療も含めて徹底的に対応することが大事だと思います。何事においても最初が本当に肝心です。

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