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戸田克樹のコラム
第151話「お気を付けください」

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2017年9月6日

「子牛が鼻血出してとまらない」
という電話がかかってきました。

「牛が鼻血!」と聞くと、真っ先に浮かぶ恐怖の病気がCVCT:後大静脈血栓症です。
血管内に生じた血栓が血管を閉塞させるのですが、とくに問題なのは血栓が血流に乗って移動し肺動脈を閉塞させた場合です。肺高血圧となり、その結果大量の喀血(肺からの出血。胃からの出血のときは吐血ですね)を突然呈するのですが、それが鼻血となって表れるわけですね。

あとは角損傷でしょうか。骨内部の空洞がつながっているため、角が折れたときも鼻血が出てきます。

CVCTは肝膿瘍や肺膿瘍などの化膿病変が原因で血栓が形成されると考えられていますし、何より子牛では聞いたことがありません。角も折れるほど伸びていないでしょうし…
「柵かどこかで切ってしまったか、走り回って壁に激突でもしたのかな」と思いながら農場へ向かいました。

するとそこには

牛舎を飛び出してうろうろしていた子牛を捕まえようとしたところ、走り出し、そのまま車を駆け抜けようとしたが失敗し激突した様子…。
交通事故?でした!

牛は鼻鏡先端がガラスで切れていて、そこから出血していました。

あんなにひどい激突の割には傷はそこまで深くはなく、子牛も鼻血をだらだら流しながら、治療がよほど嫌なのでしょう、元気いっぱい逃げ回りました。

子牛の突然のダッシュは恐ろしですね。
皆さんもお気を付けください。

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