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松本大策のコラム
お母さん牛とルーメンアシドーシス

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2017年6月16日

 みなさん、ルーメンアシドーシスって聞いたことがありますか?肥育農家さんなら耳にしたことがあると思うのですが、牛さんは食べた炭水化物(線維とデンプン)を第一胃(これを英語でルーメンと言います)で、発酵消化してお酢の仲間(VFA:揮発性脂肪酸といいます)に変化させて、第一胃の壁から吸収します。このVFAというお酢の仲間が牛さんのエネルギー源なのですね。
 ところが、微生物によって炭水化物が発酵する速度は、炭水化物の種類によって変化します。たとえば小麦粉はとても早いのですが、トウモロコシの厚圧編などは比較的ゆっくりです。それから、飼料の総線維の量によっても変化します。

 それから、第一胃の粘膜からVFAを吸収する速度も、お母さん牛によって(主に系統の違いによって)異なります。平茂勝のような気高系の牛さんは比較的吸収速度が速いのですが、最近人気が出てきている田尻系の牛さんは、吸収速度が遅い子が多いのです。系統といっても字面で判断しちゃだめですよ。みなさんだって同じ系統でも兄弟で、お父さん似だったりお母さん似だったり(たまには隣のおじさん似に人もいるかもしれませんが(笑))するでしょ?字面ではなく、そのお母さん牛はどの系統の特徴を持っているか、顔立ちとか体型、足の太さなどの容貌や実際の飼料に対する牛さんの反応などで判断しましょう。発酵速度が早くVFAの吸収速度が遅い組み合わせになると、第一胃にお酢の仲間がたまって酸性になってしまいます。これがルーメンアシドーシス(第一胃の胃酸過多くらいに考えてください)

 さて、ここから本題なのですが、肥育牛の場合、濃厚飼料を9kgくらい与えますから、飼料の発酵速度の影響は強くでると考えられますよね?しかし、たった1.5kgくらいしか配合飼料を与えないお母さん牛さんでも、発酵飼料の違いによってルーメンアシドーシスが出るのです。そのときの症状は、発情が来ない、排卵が遅れる、それから見落としがちなのが「足を痛がる」。 餌による足の病気は蹄葉炎が有名ですが、白線裂や白帯病などもルーメンアシドーシスが原因のことがあるのです。こういう症状が見られたら、餌も含めて考えなければなりません。

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