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蓮沼浩のコラム
第445話:乳汁中の細菌が原因?

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2016年7月19日

 長い雨続きの日が終わったと思ったら、激しい夏日がはじまりました。牛さんだけでなく、農家さんや獣医さんもバテないようにしないといけませんね。脱水注意です。

 さて、前回まで子牛の下痢について色々とお話ししてきました。その中で、まだはっきりとは判明していないけれども、意外と子牛の白痢の原因の中の一つになっているのではないかと考えられることを紹介しますね。

 昔から白痢が止まらない時に獣医さんは抗生物質と消炎剤を母牛に投与することがありました。先輩の先生方曰く、「デキサを打つことで母乳の量を減らしているんだ。それで、子牛が乳を飲む量が減って下痢が止まるんだよ」と教えていただき、小生も子牛の下痢が止まらない時は、断乳する前にペニシリンとデキサメサゾンを母牛に投与していました。もちろん現在も使うテクニックです。ちなみに現在はこの処置にビタミン剤も併用しています。

 母牛に注射をすることで、確かに子牛の下痢が止まることがあります。そこで、小生は昔、本当にデキサを打つことで乳量が減るのか確認するために、和牛の乳を搾ってみたことがあります。しかし、そこまで乳量が減るという結果はでませんでした。では、何故子牛の下痢が止まることがあるのか?その一つの考え方に、乳汁中の細菌量というものがあるのかもしれません。子牛の下痢がなかなか止まらない母牛の乳汁を検査すると、Bacillus spp.  Staphylococcus spp.  Streptococcus spp.  Pseudomonas spp. などが検出されることがあります。もちろん環境中の細菌の可能性もあるのですが、これは非常に重要なポイントです。母牛に抗菌薬を打つことで、これらの細菌量が減り、その結果乳質が改善することで子牛の下痢が止まっている可能性もあります。今後もこのような視点での子牛の下痢対策というものも面白いかもしれませんね。しかし、基本はやはり畜舎の衛生環境の整備であることは間違いありません。乳汁が汚染されるような環境はやはりいただけないですからね。

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