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蓮沼浩のコラム
第426話:やっぱり、肺炎にしてはいけない その5

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2015年11月19日

 出張にでていろいろな農家さんにお邪魔させていただくと、本当にさまざまな発見と気づきがあります。今までの常識を覆されるようなことも結構あります。世界は広い。勉強することは本当に多いです。でも、それって楽しいですね。今日も1日楽しかったです。

 さて、前回重度の慢性肺炎の根底には必ずマイコプラズマ・ボビスが関わっているというお話をさせていただきました。それならば、このマイコプラズマを予防することができれば肺炎の問題はかなりクリアーできるのではと考えるのは当然の流れとなります。しかし、このマイコプラズマの感染を防ぐということが非常に難しいのです。
 最初にこの問題を困難にしている原因の一つにワクチンがないという問題があります。たとえば牛RSウイルス、マンヘミア、パスツレラ、BVDなどはワクチンが開発されているので何とかワクチネーションで病気をコントロールすることが可能なのですが、マイコプラズマは牛用のワクチンがまだありません(H27年11月現在)。つまりマイコプラズマにたいする迎撃用ミサイルを準備することができないという問題があります。
 次にこのマイコプラズマは非常に感染力が強く、おまけに爆発的に増えるので一気に環境が汚染されるという問題もあります。もしも牧場で発生した場合は相当な覚悟で清浄化を目指さなければいけない疾病なのです。ちなみに乳牛の世界では1頭でもマイコプラズマ・ボビスに感染している乳房炎牛がいた場合は即淘汰です。そのままにしていたら牧場はとてつもない損害を被ることになります。しかし肉用牛の世界では肺炎の検査でマイコプラズマ・ボビスが検出されても特に症状が出ない場合もあり、そのまま放置されることがあります。というか、マイコプラズマ・ボビスの検査をすることさえほとんどありません。確かに多くの牧場ではそこまでする必要はないと思います。でも、大規模牧場であり、なおかつ子牛の中耳炎やら肺炎で本当に困っている牧場は絶対にこのマイコプラズマ・ボビスの検査を実施する必要があると小生は確信しています。中耳炎や肺炎が多発している牧場ではほとんど100%に近い子牛でマイコプラズマ・ボビスが検出されるからです。目には見えないけど、すさまじい感染が広がっている。このことをみんなが認識すること。すべての予防はここから始まります。

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