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佐々隆文のコラム
「プリッドの話−4 「いろいろな繁殖障害」」

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2007年3月26日

 牛の繁殖障害にはいろいろありますが、ここでは先天的な(生まれつき生殖器や卵巣に障害があるもの)ものではなく、後天的でかつ原因が卵巣にある繁殖障害に絞って簡単にお話します。
 牛では、分娩後50日過ぎても黄体形成がみられず、排卵活動が開始されないことを卵巣静止といいます。(未経産の場合は、卵巣は正常で春期活動の時期が過ぎたのに発情が来ないことをいいます。)この卵巣静止は卵胞が発育しないか、または卵胞は発育するが十分な大きさまで発育しないため排卵されず、閉鎖退行を繰り返している状態です。
 逆に、牛の卵胞は排卵前でも通常20mmを超えません。その卵胞が20mmを超えて大きくなり、なおかつ排卵せず長期に存続する場合を卵巣嚢腫と言います。卵巣嚢腫には卵胞嚢腫と黄体嚢腫の2つがあり、後者は、大きくなった卵胞が排卵しないまま、その壁が黄体化したもので、卵胞嚢腫に併発して起こることが多いと言われています。(ちなみに、卵胞嚢腫と黄体嚢腫の区別はエコーなどを用いると正確に診断できますが、直腸検査だけではなかなか難しいものがあります。)
 一方で、発情周期が正常であるにもかかわらず、卵胞が発育・成熟する発情期に明確な発情を示さないものがあり、これを鈍性発情と言います。これには、発情兆候は見られるが弱いものから全く発情が見られないものまでさまざまです。この鈍性発情は自然哺乳の農家さんに多いような気がします。
 他にもたくさんの卵巣疾患がありますが、繁殖に関する治療を行う上で、以上の3つ(卵巣静止、卵巣嚢腫、鈍性発情)の病気が一番メジャーなのではないでしょうか。
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