(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
「子牛を丈夫に育てる その10〜寄生虫の駆除〜」

コラム一覧に戻る

2009年12月14日

 さて、生まれたばかりの子牛(新生児期)の衛生管理もいよいよクライマックス。生まれてすぐにここまでやっておけば、あとは一般管理に注意を払えばよいのです。
 今回は、放置すると非常にやっかいな割に、予防法は簡単な寄生虫の駆除のお話しです。言い換えると、寄生虫の駆除は、かんたんに生産性を上げることが出来る手法のひとつだというわけですから、みなさんぜひ手抜かりなくやって下さい。
 新生子牛の駆虫は、生後1週間から2週間をお勧めしています。駆虫薬に限らず、お薬というものは、体重割りで使用量が決まっていますから、なるだけ小さいうちの方が、コストが安くてすみますし、それ以上に、子牛の初期発育に悪影響を及ぼす寄生虫を駆除することによる発育の改善や、その後の飼養管理が容易になる利点を考えると、寄生虫が感染するなるだけ初期に駆除した方が有利というわけです。
 ただし、子牛も寄生虫が感染することにより、その寄生虫に対する免疫を獲得しますから、生後1〜2週間は寄生虫の感染を受けさせ、その後に駆除した方が、子牛の免疫の面でも有利というわけです。
 寄生虫のお話しは、いろいろなところでしていますから、ここでは簡単にお話ししますが、子牛で注意が必要な寄生虫といえば、大きく分けて2種類考えられます。
 ひとつは、お母さんの胎盤を通じて子牛に感染したり、お母さんのミルクの中に子虫が入ってきて子牛に感染する「乳頭糞線虫」、子牛の栄養分の吸収を阻害したり横取りしたりして初期発育を低下させる「クーペリア」などの「線虫類」という仲間です。もう一つが、「コクシジウム」で有名な「原虫類」です。
 コクシジウムというと、すぐに「血便」を思い浮かべる方がいらっしゃいますが、血便はクロストリジウムやサルモネラなど他のバイ菌との混合感染が主な原因で(最近カビ毒による血便が増えてきています。注意! 別の項でいずれお話しします。)、じつはコクシジウムの症状は、みなさんの農場でよく見かける「軟便や下痢」なのです。でも、このためにスタータの食いが上がらなかったり、腸管免疫が低下して風邪なども引きやすくなったりします。
|