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松本大策のコラム
「なめたらいかんぜよ! 誤嚥性肺炎のお話」

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2009年3月21日


 時々「子牛がミルクを引っかけた」とか、「竹づっぽ(竹筒)で薬を飲ませたらのどに入ってしまった」などの稟告で急診がくることがあります。いわゆる誤嚥性肺炎(誤飲性肺炎とか吸飲性肺炎ともいいます)というやつです。
 これが以外とやっかいなのです。最初はそんなに悪くなさそうだったのに、時間がたつごとに苦しそうになってきて、最後は倒れて死んでしまった、なんて例もあります。
 どうしてそんなことになるのかというと、上の図のように、はじめは薬やミルクなどを引っかけたところだけが悪いのですが、その分呼吸が苦しいので、ほかの部分ががんばって呼吸しすぎて、一部はパンパンに空気がたまって吐き出せない状態(代償性肺気腫といいます。)になります。そうなるとさらに酸素を吸収する部分が少ないから、またほかの健康な部分ががんばりすぎて肺気腫になって..。と悪循環を繰り返し、肺のガス交換(酸素を取り入れて二酸化炭素を排出する働き)が働かなくなって最後は死んでしまうのです。
 ですから、まず誤嚥をさせてしまったときは、落ち着いて牛さんに運動制限をかけます。追いかけ回したりすると、体が酸素を要求するので大きな呼吸をするため、よけいに肺気腫部分が増えちゃうんですね。もしも同居牛がいる場合は、同居牛をほかの部屋に移して、誤嚥下牛の安静を確保した上で獣医さんを呼んでくさい。なにせ、肺に引っかけたのがミルクとか薬ですから、ばい菌の繁殖にも好都合です。最初にきちんと処置してもらった方がよいのです。それから、予後判定(これから回復するのか、進行するのかの判断)は、誤嚥後15分から1時間は状態を観察するべきです。
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