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松本大策のコラム
「お水のお話し」

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2009年2月2日

 以前(2007年の12月20日コラム)、ウォーターカップの汚れのお話しをしましたが、今回も「お水」のお話しです。
 僕が診療していた農場で、子牛が必ず難治性の下痢を起こすところがありました。治療して少しよくなってもすぐに再発するので、はじめは母乳性かと思ったのですが、離乳後の子牛でも下痢が出ますし、母子分離をしても状況は変わりません。そこで、子牛の飲み水を分析してみました。すると飲み水に使っていた山水(裏山の小川の水をパイプで引いてタンクに溜めていたのです)からウジャウジャと大腸菌が検出されました。この農場では、牛舎の飲み水を上水道に替えていただいてから、子牛の下痢が激減し、また発症しても普通に治る様になったのです。
 他の農場でも、異常に子宮内膜炎の多い(発情粘液に膿が混じる状態です)ところがあり、そこの受精師さんは大変腕のいい信頼できる方だったのでおかしいな?と思っていたのですが、受精の時に使っている水がやはり井戸の水でした。そこで「受精の時だけはポリタンクで水道水を持ってきて使っていただけませんか」とお願いしたところ、子宮内膜炎の発症が見られなくなりました。
 他にも、井戸が堆肥(当時は野積みも多かったのです)の近くにあった農家さんがありました。飼料畑には気を使っていたため、粗飼料の硝酸塩は低かったのですが、それにもかかわらず硝酸塩中毒の症状が見られました。そこで井戸水の硝酸態を測定したところ、2,000ppm近くありました。水は1日に20リットル以上も飲むので、粗飼料以上に硝酸塩濃度にも注意しなければならないのです。
 たかがお水のお話しですが、何かの際に参考になれば、と思ってお話ししました。
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