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池田哲平のコラム
「脂肪壊死症を考える(2) 〜脂肪壊死症とは?〜」

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2011年4月15日

 まずはじめに、脂肪壊死症とはどういう病気なのか?をみていきたいと思います。
 牛の脂肪壊死症は、腹腔内の脂肪組織が様々な原因により変性壊死を起こして非常に堅い塊(腫瘤)へと変化し、これらが消化管を圧迫・狭窄することで排便困難・下痢・便秘などの消化管障害や食欲不振を引き起こし、重症例では衰弱して死に至る病気です。脂肪壊死塊が出来やすい場所としては、主に円盤結腸・直腸・腎臓周囲の脂肪組織が挙げられます。黒毛和種の繁殖牛や肥育牛で特に多く発生し、種雄牛に発生する場合もあります。
 私は普段、ほぼ黒毛和種しか診療しない(1件だけホルスタイン去勢肥育農家さんがあります)ので、ホルスタインを始めとした他種の牛に関してどの程度の発生があるのかは分かりませんが、黒毛和種では決して珍しい病気ではありません。我々の診療所では、月に一頭くらい発生しています。その多くは肥育の仕上げ期に入った牛で、去勢・雌両方に発生しますがどちらかというと雌に多いです。繁殖雌牛でも散発し、産子数に関係なく発生します。
 臨床症状として現れず(下痢や食欲不振がみられない)、屠畜の際に偶然発見される牛がいる一方、脂肪壊死症の特徴的な症状を示すものの脂肪壊死塊が腹腔内深部に存在していて、直腸検査では触知出来ず確定診断できない、というような“潜在的脂肪壊死症”の牛を含めると、もう少し数は増えるかもしれません。
(つづく)
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