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池田哲平のコラム
「牛の解剖66: 十二指腸(2) ~腸胃反射~」

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2010年12月17日

 このように、十二指腸では第四胃から送られてきた胃内容物をさらに消化して、十二指腸を含めた下流の腸管で吸収します。ですが、十二指腸以下での消化・吸収のスピードには限界があります。それを超えて胃内容物が腸管に送られてくると、腸管では消化不良や吸収不全が起きてしまい、せっかく食べた飼料が無駄になって下痢となって排泄されてしまいます。このような事態を防ぐために、動物の体には優れたストッパー機構が存在します。それが“腸胃反射”と呼ばれるものです。
 胃から十二指腸に胃の内容物が入ってくると、十二指腸内は胃酸によってpHが下がり、脂肪やたんぱく質(orペプチドやアミノ酸)の存在によって浸透圧が高くなります。このような変化を十二指腸の粘膜上皮が感じ取ると、種々の消化管ホルモンや迷走神経の働きによって胃の運動を調節します。胃の運動を抑えたり、胃の出口を小さくすることによって、胃内容物が十二指腸に出て行く量やスピードを制御しているのです。こうすることで、腸管での消化・吸収のスピードに合わせて胃内容物は胃から十二指腸へと排出され、消化・吸収に最適な腸内環境が作られているわけです。
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