(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第597話:オーストラリア肉牛産業事情視察 その3

コラム一覧に戻る

2019年12月12日

 嗚呼、どんどん時間が過ぎていきます。あっという間に12月も中旬です。すぐに年越しとなることは間違いありません。時間をとにかく大切にして今年最後を乗り切ります!
 
 
 前回、オーストラリアで問題となっている旱魃についてお話ししました。そこで今回はさらにこの旱魃による影響を深堀してみたいと思います。

 どの家庭も家の周りに必ず芝を植えています。外から見ると、まるで「茶色い海の中に浮かぶ緑の島」のような感じです。芝を植えている理由は、あまりにも緑が少ないので、家の前だけでも緑を保っていなければ、そこに住んでいる人が精神的に参ってしまうことがあるからだそうです。この話だけでも旱魃の深刻さがわかります。本当に印象的な風景でした。

 旱魃の影響で畜産や農業等で田舎に住んで生計を立てていくことが難しい(今回聞いたところは、経費ばかりかかり『全然儲からない』そうです)ので、都会に出て行ってしまう若者が結構いるそうです。そのためオーストラリアも場所によっては過疎高齢化が進んでいると聞きました。ゴールドコーストやブリスベンなどの都会では若者を沢山見かけましたが、畜産が行われている地域(今回訪れたのはトゥーンバ近郊)では、あまり若者を見かけませんでした。ただし、若者を見ないのはあまりにも土地が広く、人口密度が低すぎることが影響しているのかもしれませんが・・・。とにかく家と家の間の距離は半端ないです。農家さんが住んでいる所の周りには家一軒ありません。ひたすら旱魃の大地です。

 旱魃によって農業や畜産業をあきらめて土地を売る農家さんもいるそうです。すると、そのような土地を買い集めるブローカーが現れ、最近はその活動が活発になっているそうです。あのような干からびた土地を買っても結局何にもならなさそうですが、将来雨が降って有効利用できる可能性に賭けて土地を買い集めているのでしょうか?

 240頭から50頭にまで頭数を減らした若い農家さんに「仕事は好きですか?」と聞くとすぐに「もちろん!僕は自分の仕事が大好きですよ!」と笑顔で答えてくれました。国は違えども、このような若い農家さんはいいですね~。ちなみに雇われているカウボーイの給料について聞いてみました。腕の良いカウボーイで年間296日程度出勤(週休1.5日ぐらい)し、年収は60,000豪ドル(約530万円:豪ドル1=88円)だそうです。2016年のデータではオーストラリアの平均年収は78,832豪ドル(約690万円)なので、平均よりは少し低いです。日本の平均年収が432万円(平成29年度)なので結構高い感じもしますが、オーストラリアは物価がかなり高いので単純には比較できません。それにしても本物の馬に乗っているカウボーイはかっこいいですね~~~。とても上手に牛さんを集めていました。 

 今回の話はあくまでも小生の見てきた狭い範囲での話になりますので、その点はご了承くださいね!

今週の動画 「旱魃のなかでの農業 Agriculture in the midst of drought.」

|