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戸田克樹のコラム
第264話「直腸検査ってやっぱり大事」

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2019年12月11日

「数日前からエサ食べないのよね~。血液検査してもらえない?」

という電話を受け、牧場へ到着。
検査予定の牛は経産牛ですでに肥育管理がスタートしていた牛でした。出荷はまだ数か月先ですが、よく食べていた牛なのか結構仕上がっているいい牛でした。

保定しようと部屋に入ると軽快な逃げっぷり。
「ほ~。なかなか元気じゃないですか。重症ではないかもな~。」という印象でした。

そしていざ捕まえて柵につなごうとすると、ありえないくらいの力で抵抗します。さらには鼻息も荒く、前足で土を蹴り威嚇する様子も確認されました。体温を計ろうとしてもお尻を激しく左右に振り、なかなかうまくいきません。
「ほ~。神経過敏だし、カルシウム欠乏かビタミンA欠乏かもしれないな~。血液検査で数値を確認しようかな~」と思いました。

経産牛の場合、直腸検査は初診から必須で行うように普段から意識しています。「触れるところは漏れなく触る」が大動物診療の基本です。なかなかのお尻の振りっぷりに苦戦しながら手をいれると…

まさかの全周囲を囲む巨大な脂肪壊死塊を発見しました!
血液検査どころか、治療どころか、すぐさま出荷の相談にうつります。宿便は水様性でしたので、脂肪腫の影響もすでに出ています。脂肪腫がこの大きさなら食欲も出ないよな~と納得の大きさでした。

直腸検査をしていなければ、どうだったでしょう。血液検査で異常がなかった場合は食欲が出るような処置を続けて医療費を無駄にしていたかもしれません。それどころか、牧場内で牛を死なせてしまっていたかもしれません。改めて直腸検査の大切さを痛感した症例でした。直検って本当に大切です。

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