(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
原田みずきのコラム
発熱のメカニズム

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2019年11月22日

11月もいつの間にか後半に入り、今年もあと6週間くらいになりました。この間は11月生まれと12月生まれの獣医師を事務の竹添さんたちが可愛らしいケーキでお祝いしてくれました。とても美味しかったです。ありがとうございます。

さて、前々回のコラムでは、体温調節中枢が平熱を維持するメカニズムについてご説明させていただきました。今回のコラムでは、普段は平熱を保っている恒温動物がどのようにして発熱するのかをご説明していきます。
まず、牛の発熱の原因は細菌やウイルスなどの病原体への感染がほとんどです。そこで今回は感染性の発熱について説明していきます。夏場は熱中症でも体温が上がりますが、これはまた別の機会に説明させてください。できたら暑いときがいいですね。
細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入すると、まず白血球が病原体を排除するために集まってきて病原体と戦います。このとき戦場付近にある細胞は傷ついたり、病原体に感染したりして炎症を起こします。細胞は炎症を起こすとサイトカインなどの化学伝達物質を放出します。これが血流に乗って脳まで運ばれると、脳血管内でシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)という酵素が作られ、この酵素がプロスタグランジンE2(PGE2)を産生します。PGE2は脳内に拡散したのち視床下部に作用し、熱産生の司令を出させます。これによって寒冷刺激を受けたときと同じように、体は血管を収縮させて熱放散を抑制し、筋肉を収縮させて熱産生を促進します。外の環境から奪われる熱量よりこの働きのほうが強いと、体は発熱します。

うーん、カタカナばかりで頭がこんがらがりますね。COX-2やPGE2は次回ご説明する解熱剤の作用機序で重要になってきます。次回からは発熱の生理学的意義と解熱剤についてご説明していきます。

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