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戸田克樹のコラム
第261話「お産前のひと手間」

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2019年11月20日

分娩介助を行うとき、破水の有無、産道の開き具合、陣痛の強度、胎仔の大きさ、胎位、などさまざまな項目を次々に確認していきますよね。手を入れる前には陰門をしっかりと洗浄し消毒し、手には直検手袋か分娩専用の長手袋を使用して産道や介助者の汚染を予防します。

衛生度を意識しながら最後に陰門を洗浄し、手袋を装着した手を産道に入れ、膣壁マッサージや胎仔へのロープかけを実施していきます。

しかしここで問題が発生する可能性が極めて高いのです!

それは努責による突然の排便です。
いままで陣痛が弱かった母牛でも、膣内に手が入ることで刺激を受け、非常に強い陣痛が発現するような場合があります。するとそれに合わせて糞便が次から次にでてくることがあります。

排便中は手が汚染されるのと、産道内に糞便が侵入するのを防ぐために一旦手を抜き、介助は中断です。糞便で汚れるのでまた陰門を洗浄し消毒します。このときに手袋をつけたままだと洗浄具に触れることで汚染されますので、手袋を外して行います。

そしてまた手袋をつけて作業を再開すると、また排便が。
また、手を止めて手袋を外して洗って手袋をつけて。あー…(-_-;)。

とうことで、糞便がでてくるたびに手間取ることこの上ない状態になってしまいます。

そうならないために、「まずは除糞は十分におこなってから産道に手を入れる」というひと手間を必ず実施するようにしましょう。分娩介助のストレスを少なくし、汚染のリスクも抑えることができますので一石二鳥です。ちょっとしたことですが、結構重要ですよ~。

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