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松本大策のコラム
この冬に備えよう!

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2019年11月11日

 みなさん、今年の夏はさんざんでしたね。台風被害で、未だ通常の生活が取り戻せない方も大勢いらっしゃいます。それらの方々が、1日も早く元の落ち着いた生活に戻ることができますようにお祈りしています。

 さて、今年の夏のダメージを引きずっているのは私たちだけではありません。みなさんのところの牛さんたちも、暑さや気圧変動、台風の恐怖などのストレスによって、かなりダメージを受けています。また、これから寒い冬が来ます。今年は、いつも以上に冬の対策をしっかりしておきましょう。

 冬というと、まずやっかいなのはマイコプラズマによる子牛の肺炎です。何度も治療しているのになかなか熱が下がらないとか、なかなか元気が出ないなんて子には、耳が下がっていようがいまいが関係なく中耳洗浄をしましょう。マイコプラズマによる中耳炎の中には、中耳から鼓室に膿がたまっているのに耳が下がらないタイプや耳垂れが見られないタイプもあります。
 こういう子は、中耳洗浄をすると翌日には熱が下がっていることが多いのです。ただし、中耳洗浄は3~5日は続けましょう。共済保険は認められなくとも、現金診療でやってもらえます。鼓膜は生体膜ですので再生しますから、疑わしいときは中耳洗浄をかけましょう。

 次に注意しなければならないのは、コロナウイルスやロタウイルスによる下痢です。こちらは生後3日くらいで発症しますし、急速に子牛が脱水し、また体温低下で弱って起立不能どころか生きてるの?死んでるの?みたいな状態になることも多いのです。こういう子牛には「輸血」が一番、というよりまず他に助ける方法がないと言っても過言ではありません。目玉が脱水で引っ込んだ上、乾燥して触っても目も動かさないような起立不能の子牛が、翌日は走れるくらい(いや、本当だってば!決してオーバーではありません)に回復します。
 体温が低下している子牛をお湯で急速に温めるのはやめましょう。血栓ができやすく、脳血栓などを併発して神経症状を起こして死んでしまう子牛がいます。低体温(環境気温が低すぎて、病気でもないのに低体温に陥るアクシデンタルハイポサーミアも含めて)の子牛は、30分あたり0.5℃程度で体温を上げてあげなくてはいけません。この点、電気毛布は適当です。おねしょ対策で防水ですし、今なら安いので一頭使い捨てにしてもふところは痛みません。

 このような苦労をできるだけ減らすために、気温が下がるという予報が出たらモラフィットSPを子牛に与える、冬に備えて予防的にV4処置を実施しておく、床だけは常に乾燥させて敷き料で暖かくしておく、床に発泡ポリエチレンを敷く、などの対策を実施し、子牛に異常を感じたら「決して様子を見ない!」ことを心がけましょう。問題の先送り、しかも悪化させてからの対応になるだけです。

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