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笹崎直哉のコラム
耐性菌のお話 その2

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2019年10月1日

 ここで耐性菌とお薬の関係について、グラフを用いて説明していきましょう。

 縦軸は血液や組織中の薬剤の濃度、横軸は時間の経過を示しています。ご覧のように抗生剤を投与すると血液や組織中の濃度が徐々に上昇し、その後下降するといった経過になります。しかし抗生剤の種類や皮下注射だったり、血管内注射等、投与方法でグラフの形態は変化していきます。
 ここでMPC(Mutant Prevention Concentration)、MSW(Mutant Selection Window)、MIC(Minimum Inhibitory Concentration)というなんだか難しそうな横文字がならんでます。1つずつ説明していくと難しくなるので、代わってグラフの①~③の領域を紹介することにします。

 ① 抗生剤に対してもともと感受性のある菌も変異を生じた耐性菌も増殖できない領域です。ここまでの濃度に達するよう治療ができれば安心です。
 ② 感受性のある菌も変異を生じた耐性菌も増殖可能な領域です。
 ③ 感受性のある菌は増殖できない領域ですが、変異を生じた耐性菌が増殖してしまう領域です。ここはかなりポイントになりますので赤文字で示しています。つまり抗生剤の投与により耐性化がドンドン行われていく危険領域になります。

 このように③の領域よりも高い薬剤濃度を長い期間維持できるように投薬することは、生き残っているバイ菌達をしっかりと抑え、耐性菌の増殖を最小限に留めることにつながっていきます。

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