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松本大策のコラム
群内で弱い母牛のケア

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2019年8月26日

シェパードでは獣医師を募集しています
 シェパードでは、関東地区の獣医療が不足している地域を支援するため、栃木県那須塩原市に支所を設けることにいたしました。2020年の4月に開設する予定です。経験、未経験は問いません。シェパードで研修後、現地勤務となります。募集内容は こちら から。

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 繁殖農場のみなさん、牛舎には写真のようなお母さんはいませんか?

 これは、発情時に上駕される際に出来るすりむけ傷です。でも、1回や2回乗られたところで、こんな風にはなりません。

 こういう状態になるのは、群内で最も弱い牛さんなのです。お母さん牛に発情がくると、発情初期は他の牛さんに上駕しますよね?でも自分より群れの中の地位が高い牛さんに乗ろうとすると、当然のごとく怒られていじめられます。そこで、自分より弱い牛さんに上駕しようとするわけです。ですから、群れの中で、いずれかの牛さんに発情が来るたびにターゲットになって乗られる一番弱い牛さんは、たくさんの母牛に上駕されて尾根部が禿げてくるのです。尾根部のすりむけ傷だけではなく、上駕時に蹄で傷をつけられるため、腰角に傷ができたりすることもあります。

 こういう牛は、ストレスで発情が来なくなったり、受胎率が低下したりします。優しいみなさん、こういういじめられる牛さんを見つけたら、かわいそうに思って最初に考えるのは、「別の部屋に移してゆっくりさせてあげよう」ということではないでしょうか?しかしそれをやってしまうと、次は群れの中の順位がビリから2番目の子が被害者になるだけです。

 それでは、いったいどうするのが正解でしょうか?

 こういう場合に考えられるのは、「いじめられている牛さん」の群れの中の立場を強くしてあげることと、ストレスの影響を受けにくくしてあげることです。群れの中の立場を強くするって、どうすればいいのでしょうか?それは、群れの大ボスである「あなた」が、いじめられている牛さんに声をかけたり、ブラッシングしてあげたり、えさやりの時に「おまえも大変だけど応援してるからね」と声をかけつつ一掴み飼料を多く与えてあげるのです。すると、他の牛たちは「なんだ?こいつ弱っちいのに、大ボスからかわいがられてるぞ。もしかしたら俺たちより立場上なんじゃね?」と考えて、次第にいじめられなくなります。

 ストレスの影響を受けにくくするために使いやすいGABA配合添加物もあります。人間でも「ストレスと闘うあなたにGABA !」って宣伝してるでしょ?ゼノアックの「モラフィットSP」というソフトペレットがそれです。モラリックスに似てるけど違うものですよ。GABAがしっかり含まれていて、ストレスを受けても、その影響が出にくくなるのです。


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 この添加剤は、群編成の前から、とか、蹄や角を切る前、去勢の前から数日与えておくと、そういうストレスも防いでくれますよ。

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