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蓮沼浩のコラム
第580話:BRDC病原体の検査について その6

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2019年8月15日

シェパードでは獣医師を募集しています
 シェパードでは、関東地区の獣医療が不足している地域を支援するため、栃木県那須塩原市に支所を設けることにいたしました。2020年の4月に開設する予定です。経験、未経験は問いません。シェパードで研修後、現地勤務となります。募集内容は こちら から。

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 西日本に台風直撃です。自然災害には本当に気をつけなくてはいけません。大変ですが、念には念をいれて対策をとらなくてはいけませんね。
 
 
 散々BVDについて書いてきたので、ここでちょっとこの病気の発生状況を確認しておきましょう。全国で摘発されたBVDのPI牛の発生頭数の推移を簡単なグラフにしてみました。

 2011年から増加しています。これらのPI牛の中にはスクリーニング検査で発見されたものが結構含まれていると思います。BVDの危険性が少しずつ理解されてきて、大規模牧場ではこの頃から自主的に検査するところも出てきているように思います。2018年は382頭発生しています。2015年以降は毎年300頭以上の発生報告があります。

 平成30年の発生状況を地域別にみると、北海道の発生が多いです。もちろん牛さんの頭数も多いので簡単には比較できませんが、頭に入れておいてよさそうです。そして関東、近畿、九州・沖縄地方での発生が続きます。中部地方では発生がありません。

 この頭数を多いとみるか、少ないとみるか?確かに全国の牛さんの頭数に比べたら、微々たるものです。ほかの病気・・・・例えばBLV(牛白血病)と比べてみると、BLVは平成30年の発生頭数が3,859頭なので、BVDはその1/10程度になります。しかし、牧場内にPI牛が一頭でもいると、今までお話ししたように甚大な被害が出ます。妊娠牛の牛群で水平感染が広がると地獄です。少しずつ発生頭数が増えてきている傾向がみられるので、今後の変化には十分注意していく必要がありますね。
 あくまでも小生の今までの経験からの見解ですが、PI牛は基本的に初産で産まれてきたF1子牛が多いと思います。未経産のホルスタインは搾乳していないために、バルクタンクのBVD検査で摘発することができません。さらに、BVDに対する抗体も十分に持っていない可能性もあります。このような点から、ホルスタインの初産から産まれてきたF1子牛にPI牛が多くなる傾向があるのではないかと考えています。

 このような発生状況をふまえつつ、自分の牧場での対策をそれぞれ考えていく必要がありそうですね。知らない人にとってはBVDなど全く別の世界の話かもしれませんが、小生は甚大な被害に会われた方を何名か知っていますし、予防対策の最前線にいるのでその被害の凄まじさを良く知っています。日本は将来的にBVDの清浄化を目指す必要があると思っています。ちなみにこのBVDウイルスは、日本で大きな問題となっている豚コレラと同じ「ペスチウイルス属フラビウイルス科」に属しています。どちらの病気も非常に厄介ですね。

 次回からは検査でわかる他の病気について色々お話ししますね~~~!

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