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松本大策のコラム
梅雨と夏がやってきます!

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2019年6月17日

 最近の「異常気象」って、もう毎年なんだから「異常」じゃなくて「今の気象」じゃん!って思ってるのは僕だけでしょうか?梅雨なのに雨降らないし、めちゃくちゃ暑くなったと思うと、寝冷えするぐらい寒さが戻ったり。

 これからの暑熱対策は戸田先生が書いているので、僕はこの時期に注意しなければならない消化障害について書きます。といっても下痢とかじゃありません。一見、消化器障害に見えない病気なのです。

 まず、その病名からお話ししましょう。その名も恐怖の「急性肺水腫」。夏場に増えてくるのですが、午後から夕方にかけて、牛さんが苦しそうに口から泡を吐いている。呼吸も苦しそうで、必死で目を見開いている、などがその主な症状です。肺に水が出て、そのせいで呼吸困難に陥っているのです。

というと、「これって呼吸器疾患じゃないか!」と言われそうですね。でも、その原因は第一胃の異常発酵なのです。生草には特に多いのですが、他の牛さんの餌となるもの(濃厚飼料など) にも必ずトリプトファンというアミノ酸が含まれています。トリプトファンは、牛さんの大切なアミノ酸の一種なのですが、第一胃が異常発酵すると、3−メチルインドールという毒物に変化します。この物質は、牛さんの肺にある酵素(mixed-function oxidase (MFO)というものですが、覚える必要なんか全くなし!)で代謝されて肺にひどい障害を起こし「急性肺水腫」というものを引き起こすのです。

 この状態になった牛さんは決して回復しませんから、食肉処理場まで輸送する時間が勝負になります。「どうにかならないの?」といわれることも多いのですが、気管などの空気の通り道が写真のように細かい泡で埋め尽くされているので回復するわけがありません。速やかに出荷の段取りをするのがベストです。

 そして、第一胃の異常発酵の原因となる、ビタミンAや亜鉛の不足を防ぐ、生菌剤を日頃から給与しておく、給餌時間をぶらさない、餌の内容を急に変えない、などの予防策をとる事が大切になってきます。

 腐敗したサツマイモに発生する毒物(イポメアマロンとか4-イポメアノールというもの)も同じように代謝されて「急性肺水腫」を起こすので注意しましょう。

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