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松本大策のコラム
中国輸出の可能性と中国経済 その2

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2019年5月13日

 前回は、中国を歩いて肌で感じる中国経済の実情についてお話ししました。今回は、その続きから、中国国内の牛肉事情についてお話ししたいと思います。

 アメリカのトランプ大統領が、10日から中国の輸入関税を10%から25%に引き上げるとツィートしました。トランプ氏はツイッターで、今回は対象としていない残りの「3250億ドル(約36兆円)分」についても「近く25%になる」と予告しています。
 こちらも中国にとって大変大きな痛手です。中国経済のダメージを懸念して、世界中の株価は下落しています。

 僕がいま気になっているのはこのくらいなのですが、他にも環境対策とか公害対策とか、お金のかかる事業が増えていくことなどを考えると、「中国輸出解禁」を手放しで喜ぶことはできないと思います。

 それでは続いて、中国の畜産動向と畜産物の消費についてお話ししましょう。
中国や東南アジアの国々は元々豚肉文化圏です。北の方では、これに山羊肉文化が入ってきます。
 というわけで、飼育技術や牧場の数も豚が圧倒的に多く、最近では大型の肉用牛牧場もいろいろ出てきましたが、肉質はまずたいしたことはありません。酪農に関しては、じつは世界有数の乳製品(ほとんどはチーズではなくヨーグルトタイプですが)消費国ですので、10,000頭規模の酪農場もたくさんあります(僕に言わせれば、一カ所で多頭飼育するのはリスク以外の何物でも無いと思います)。

 最近の話題は、やはりアフリカ豚コレラの大量発生です。

 これによって、中国の豚肉価格は、きれいに二分化しています。まず、富裕層は安心安全なブランドを求めて、そういうブランド豚は価格が高くなっています。しかし、かたや安ければ良い!という人たちは怪しい豚肉の流通が増えたこともあって(アフリカ豚コレラの死体だってお肉ですから)、安い豚肉にしか手を出さず価格の下落が起こっています。

 話がそれますが、僕は牛専門の獣医師ですが、アフリカ豚コレラの恐ろしさは、中国のニュースなどで見て知っています。日本のマスコミがなぜほとんど報道しないのか、不思議でたまりません。いずれ日本にも侵入する可能性を考えると、しっかりとした対策をとっておかなければならないのですが。

(続く)

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