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松本大策のコラム
お肉屋さんからクレームの付いたお肉特集~4.意外と多い化膿症~

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2019年4月26日

 「出荷した際には全く異常はなかったのに、お肉にクレームが付いた(怒)」というご相談の中で、意外に多く見られるのが細菌感染による化膿症です。

 「いや、そんなこと言われても、外傷もなかったし..。」

 ですよねぇ。でも、外傷がない場合でも化膿症は起こるのです。どういう場合に起こりやすいか?というと、出荷よりかなり前に、さほど目立つような跛行ではなかったけど、少し足を引きずっていた、とか他の牛さんから角で突かれて腫れていたけど、すぐに腫れは治まったよ、なんて場合です。

 こういう「内出血」の起こるような体内の傷というか筋肉の断裂などの場合、牛さんの体内の様々な場所から細菌感染が起こる可能性があります。
 たとえば、子牛の時に肺炎をやっていて肺に膿瘍がある場合や、歯肉炎で歯茎に化膿がある場合、どこか別の場所で、外傷からの化膿症がある場合、などは自家感染の原因となることがあります。
 それらの化膿症の部分にいるバイ菌が、体内を移動してしまうと、内出血の箇所に住み着いて増殖することがあるのです。血液は、中の白血球が生きているうちは、バイ菌をやっつけてくれますが、内出血などが古くなって白血球が死んでしまうと、バイ菌の格好の餌になってしまいます。ですから内出血の部分が、時間が経つと化膿してしまうのですね。

 もちろん、不適切な注射の後などでも化膿症は起こりますから、注射だけはしっかり衛生的に打ってあげる必要があります。

 一口に化膿症と言っても、写真1のように筋肉中に古い出血と膿が混在しているタイプや、写真2のように化膿症を他の場所に広げないように、牛さんの免疫系が必死で「結合組織」という丈夫な膜で囲い込んだタイプ(膿瘍膜と呼びます)、写真3のように化膿が筋肉の組織に沿って幾筋も広がっていってタイプ(断面が蜂の巣のように見えるので「蜂窩織炎:フレグモーネ」という名前が付いています)など様々です。


写真1


写真2


写真3

 さて、これらの化膿症を防ぐ方法ですが、残念ながら生きているうちになかなか気づかれないということもあって、有効といえる予防法がありません。僕も、生きているうちに肩を傷めて前足を引きずっていた牛さんで、少し肩が腫れていたので試験切開してみたら、組織中に化膿が広がっていて、除去できずに出荷を選択したこともあります。

 有効な予防法をご存じの方がいらっしゃったら、シェパードにも教えていただければ幸いです。

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