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戸田克樹のコラム
第225話「経産牛の診察」

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2019年3月6日

成牛市で元繁殖牛を購入し、肥育して出荷する農家さんのところへ診療に行く機会が多々あります。さすがは元繁殖牛だけあって、10歳以上の牛にもよく遭遇します。短期間に複数の牧場を経由している牛さんやかなりの遠方からやってきた牛もいます。

経産牛の場合はとくに初診が重要です。長く生きている分、通常の肥育牛と異なり「何をもっているかわからない怖さ」があるからです。ずばぬけて重症な肺炎をもっていることもあります。内臓機能がすでに落ちている状態でやってきてしまうこともあります。牛白血病の発症リスクもありますし、脂肪壊死症をもっていることもあります。

そんな経産牛を相手に診療依頼があるとき、直腸検査はマストで行います。
軽症だとしても、脂肪壊死塊や腫大したリンパ節がないか、という2点を確認しておくことはその後肥育していく上でも確認しておいて損はありません。
たまに直腸検査をして「この牛妊娠してます!」と大慌てすることも少なからずありますね。笑い話ですが、現場で遭遇したときは笑えません(笑)。

また、頻度こそ高くはないですが血液検査もよく行います。「なんかエサ食べないんだよね~」という稟告で、さらに診察で明確な異常が感知できないときはマストです。腎臓や肝臓の数値が悪かったり、意外に低カルシウム血症やビタミン欠乏だったり、血液検査でやっとわかることもありますね。

とにかく、検査は重要です。牛の世界で検査できることも限られていますが、コスト面を考える必要はありますが、年を重ねてきた牛の診察には検査情報は非常に有益です。

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