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笹崎直哉のコラム
滑車を使うときに注意すべき点

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2019年3月5日

 皆様お疲れ様です。鹿児島は春の気候になってきました。診療を振り返ると冬場は難産で呼ばれることが特に多く、農家さんに滑車を準備してもらうことが多かったです。しかし滑車は人力以上の力が加わってしまい、これが利点となり欠点にもなってしまいます。私はできれば農家さんと一緒に人力でゆっくりとタイミングよく「ヨイショ!!」と声を合わせて行いたいと日頃から考えています。しかし最近はどうしても滑車を頼ることが増えてきました。ここで私が滑車を使う際に注意していることお伝えします。まず次の図を参考にしてください(なお上から牛さんを見下ろした状態を想定して、作成しています)。


図1

 図1のようにお母さんを①、滑車を繋ぐ場所を②とすると、基本的にはお母さん牛の背中のライン(点線で示しています)と滑車のライン(①と②を結んだ線)が平行になるようになるように意識して牽引すると思います。しかし牽引に時間がかかったり、過大子でお母さん牛が苦しくて横に倒れてしまったら


図2

図2のように斜めに牽引することがあり、赤ちゃんの体の一部が外陰部(スソ)からすでに出てしまっているときは、特に注意です。このまま牽引を継続すると悪影響を及ぼす可能性があるからです。具体的には斜めでスムーズに娩出できないために赤ちゃんの肋骨を圧迫して肋骨骨折を招いたり、お母さん牛の産道を強く圧迫して神経を痛めたりなどなど、、、。

 お母さん牛が倒れたりする可能性を考慮して滑車を準備し、実際に倒れて斜めになったら、焦ってドンドン引かずに一度周りを見渡しましょう。滑車を一度ゆるめてセットし直したり、お母さん牛を動かしたり、といった対応をしてみてはいかがでしょうか。今後も牛さんにとってストレスのない安全なお産になるように、意識していきたいものです。

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