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松本大策のコラム
春先の肉質低下

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2019年2月25日

 ようやく日差しも春めいてきましたね。

 毎年春になると、「肉色が悪くなった」とか「しまりが悪くなって..。」などの相談をお受けします。こういう農場を巡回すると、冬場に牛さんが縮んで(寒さのせいで痩せている状態)しまっていて、春先になると急速にふくれてくる(痩せた分を急速に取り戻して太ってくる)という減少が見られるケースが多いです。

 冬場のほかの現象としては、去勢牛で陰毛の白色化(尿中の尿石成分が析出して陰毛にくっついた状態)なども見られます。この原因は、「冬場のカロリー不足」です。冬場になると環境温度が下がるので、体温維持にかかるエネルギーがたくさん必要になります。体質や環境、それまでの発育などで一概には言えませんが、外気温が5℃以下になると20%程度体温維持にかかるカロリーが増えるそうです。

 でも、痩せてきた=タンパク不足!みたいにとらえている方が結構いらっしゃいます。もしも、冬場に痩せてきたから..ということでタンパク質を増量すると、結果的に肉付きは変わらず尿石症が悪化してしまいます。
 あくまでも、冬場に痩せる原因は、「体温維持のためにカロリーが奪われて、タンパク質を身につけるためのカロリーが不足すること」ですから、カロリーを足してあげなければなりません。

 僕は、牛さんの状態を見ながら、トウモロコシの中厚圧片(湿熱品)か、乾熱トウモロコシ圧片を500g程度追加していただくようにしています。そうすると、冬場に牛さんが縮むこともありませんし、春先に急にふくれて肉色やしまりが悪くなったりすることもありません。もちろん、給与量は、現状の飼料や環境温度、系統、等でも変わってきますから、あくまでもしっかり牛さんと相談することが大切です。

 春先に出来ることといえば、出荷前1カ月間一般フスマを1kg/頭/日トップドレスで添加すること、リカバリーM やモラフィットで細胞のエネルギー変換を増加させ、生体内酸化物質を除去してあげること、の2点がこれまで有効でした。

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