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松本大策のコラム
悪性伝染病の防疫

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2019年2月15日

 岐阜県で発生した豚コレラが、いまだに「安心」というレベルまで落ち着いていません。

 宮崎県で口蹄疫が発生した当時、みなさんも必死で長靴や侵入する車両の消毒や野性動物の侵入防止などの対策を打っていらっしゃった事と思いますが、現在はいかがですか?当時と同じ意識をもって、防疫体制を整えていらっしゃるでしょうか。

 悪性伝染病のまん延を防ぐには、全員総力戦の覚悟が必要だと思います。今のうちに豚コレラを撲滅しておかなければ、すぐお隣の中国まで世界的に流行している「アフリカ豚コレラ」が迫って来ています。

 豚コレラとアフリカ豚コレラは、全く違う病気で、アフリカ豚コレラの方が、驚異は格段に上です。中国では、山東省他、数えるほどの省以外では、ほぼ全国で発生が見られ、予防薬も治療薬もなく、またワクチンもありません。中国の死亡豚が海洋投棄されているらしく、台湾その他の島にも流れ着いた死体からもアフリカ豚コレラのウイルスが検出されています。

 豚コレラを撲滅しておかなければ、このアフリカ豚コレラと日本の豚コレラの双方に対応しなければならず、それは人員もコストも、そして装備やら埋却場所までもが不足する恐れがあります。僕は、こういう2方面作戦は絶対に避けなければならないと考えています。

 さいわい豚コレラには、ワクチンがありますが、国はワクチンは最後の手段という事で殺処分と消毒で対応しています。輸出などに影響が出るということですが、現在の豚肉の輸出額は10億円程度にすぎず、豚関連では原皮が100億円ほど輸出されていますが、ワクチンを打っても原皮の輸出には影響がありませんし、経済的なことを考えると、愛知の1農場の殺処分だけで1万5,000頭に上りますから、豚そのものの損失だけで4.5億円に上ります。これまで殺処分されたすべての豚となると、大変大きな損失です。もちろんこれには、殺処分にかかる人件費とレンダリンク経費も含まれていません。

 それだけではなく、人が食べ物とするために飼育されて、世界中から購入してきた飼料を与えられた豚さんが、ただ殺されてしまうわけです。

 いろいろと考慮すべき状況はあると思いますが、「最後の手段」は使用する時期を逃すと、効果がなくなります。大変な責任でしょうが、決断すべき時に決断すべき立場の方が毅然とした判断をなさるように祈ります。

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