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2019年2月4日

 ここのところ、抗生物質の耐性菌が問題になっています。僕は、この問題の大きいところは、「耐性菌を作らない方法」について誤解が多い点ではないかと考えています。

 薬剤乱用は決してよくないのですが、「乱用」というものが具体的にどういった使い方を指すのか?についてのしっかりした認識が出来ていないように感じます。効果のない、あるいは効果の薄い薬剤を漫然と使い続けるなんて問題外ですが、耐性菌を生んでしまう一つの大きな原因は、「しっかりと細菌をたたいてしまっていない」ことにあると思います。少し調子がよいからと、治療を中途半端でやめる、高い薬だからと使用量をケチる、等は、「その薬を知っている細菌」を生き残らせることになり、その抗生物質への対処法を習得する機会を与えてしまいます。

 それから、一口に抗生物質と言っても、効果的な使い方というか、効き方の特徴というか、そういう特性が違います。ペニシリンやアンピシリン、セフェム系などのいわゆるβラクタム系抗生物質やタイロシンなどのマクロライド系抗生物質、フロロコールなどのお薬は「時間依存性抗生物質」といって、一度にドカ打ちするよりも一日に何回か投与した方が効果が上がります。
 逆に、OTC、CTCなどのテトラサイクリン系抗生物質、カナマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質、バイトリルなどのニューキノロン系合成抗菌剤は「濃度依存性」と言って、一回にたくさん投与した方が効果も高いのです。

 これらの特性をわきまえて、しっかりと細菌を叩いていく方が、耐性菌の出現は少ないはずです。それから、もう一ついつも気になっているのは、必要な牛さんに必要なお薬が与えられているのか?ということです。みなさんも経験なさっていると思いますが、同じマスの中で、1頭治療して、治ったと思っていたら他の牛が発症して、そいつを治療して治ったと思ってたら、前のやつが再発して、なんていう風に、まるでピンポンの試合のようにバイ菌をやったりとったりしてしまう。これでは耐性菌発生に拍車をかけているようなものではないかと心配しているのです。

 そういうわけで僕は、一マス全体処置や牛舎全体処置を指導することが多い(これ、自分で処置する獣医さんだったら言いにくいでしょうね。なんか利益のためにやっていると勘違いされそうで。僕は、全く自分の利益にはならないので言いやすいです)のです。哺育の子牛であれば、CTC等をミルク添加することも多いです。そこで今日のお題になるのですが、今回フロロコールの牛用飼料添加剤(液体なので飲水添加も容易です)が発売されたことをご紹介しようと思いました。宣伝料とか、一切いただいていません!(ただ、どうしても宣伝料を払いたいっ!ということであればお待ちしてます(笑))

 CTC等で抑えきれないものを全体で抑えるには大変有効ですし、その後にニューキノロンを使うにしても、先にフロロコールを使っておいたら、細胞核を攻撃するニューキノロンが核に届きやすくなりますしね。

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