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松本大策のコラム
第4胃の働きとかそれを利用した下痢予防とか

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2019年1月28日

 みなさん、早いものでもう2月目前!あっという間に今年も終わるのではないかとビクビクしている松本です。でも、早く暖かくならないかな。

 ところで、牛さんには胃袋が4つあるのはご存じですよね。第1胃から第3胃までは、人間の「食道」に当たる部分が粗飼料の発酵消化のために発達したもので、第4胃が人間の胃袋に当たります。

 それでは、第4胃の働きはなんでしょう?実は、第4胃は消化器というよりも、食べたものを一時貯蔵して、胃酸(塩酸)とペプシンという酵素で殺菌するためのものなのです。小学校では、「胃の働きはたんぱく質の消化をすることです」と教わったかもしれませんが、本当にたんぱく質を消化するのは、小腸で分泌される「トリプシン」という酵素なのです。ペプシンにもたんぱく質をある程度(ペプチドという大きな粒まで)は分解できます。でも、こんな酵素がなくとも、小腸のトリプシンはたんぱく質をアミノ酸という「吸収するための小さい粒」まで消化できるのです。

 では、ペプシンの働きは?というと、食べ物に混じっているバイ菌(脂肪やたんぱく質でできています)を壊すことです。これと、塩酸の強い殺菌力で、食べたものを安全にして、小腸以下で危険なく消化・吸収できるのです。

 それでは、これを病気の予防に使うとしたら、どうすればよいでしょう?

 それは、子牛がスターターを食べる前と食べたあと30分ずつは水を飲ませないことです。こうすると胃酸もペプシンも薄まらないので、十分な殺菌力を発揮します。それから、下痢をしたときに、60秒制限哺乳をさせると、ミルクで胃酸が薄まらないので、殺菌力を保持できます。たくさん飲ませると胃酸が薄まって、十分な殺菌ができないまま弱った腸に流れ込みますからね。

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