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蓮沼浩のコラム
第553話:いるから病気が出る

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2019年1月24日

 鹿児島には「黒ぢょか」という焼酎専用の土瓶のようなものがあります。これに好みの割合で割った焼酎を入れて、コンロで温めたあとに自分の好きな猪口で飲むと最高です。芋焼酎のお湯割り好きの小生にはたまりませんね。五臓六腑にしみわたります。ちなみに小生の住んでいる鹿児島県出水市には有名な(?)短歌があります。

 味噌舐めて 晩飲む焼酎(酒)に毒はなし
 煤け嬶(かか)に酌をさせつつ

 家から車で5分くらいのところにこの碑があります。ちなみにうちの「煤け嬶」は酌などするわけもなく、「うわ!!焼酎臭い!!いいかげんにしてよ!!」と文句しかいいません。
 
 
 先日診療をしていて改めて思いました。牛さんの感染症はその原因となる病原性微生物がいるから発生するという、極めて当たり前の事実です。口蹄疫ウイルスがいなければ、決して口蹄疫は出ません。アフリカ豚コレラウイルスがいなければ、アフリカ豚コレラは発生しません。人様もインフルエンザウイルスがいなければ、インフルエンザにはかかりません。どんなに衛生状態が悪くて、管理が酷い牧場でも口蹄疫ウイルスがいなければ、口蹄疫には牛さんはかかりません。

 では、皆さんの牧場ではどうでしょう?
 
 生後3日で子牛の激しい血便。病原性大腸菌が原因になります。哺乳期の激しい水下痢。ロタウイルスやクリプトスポリジウムが原因になります。子牛の耳が下がり、膿が出てくる。マイコプラズマ・ボビスが原因になります。小生は膨大な数の検査結果を見てきて、つくづく思います。牧場にはどっさり病原性微生物がいるということを。

 もしも、牧場で上記のような疾病がいるのであれば、是非思い出してください。このような疾病が発生するのは、その原因となる病原性微生物がいるからである、ということを。そのために、牧場で何ができるかという事を真剣に考えていかなくてはいけません。ワクチンを検討したり、ポイントとなるところを定期的に消毒したり。意外と簡単に予防できるところも結構あります。最初からあきらめないで、是非いろいろ取り組んでみてくださいね。

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