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松本大策のコラム
おっぱいが好きだーっ!

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2019年1月21日

 新年早々、何を血迷ってるんだ?といわれそうなタイトルですが、これは僕のことじゃなく(いや、僕も好きですけど)、赤ちゃん子牛のお話です。

 健康な赤ちゃん子牛なら、そりゃもう世界で一番好きなものはなに?とたずねると速攻「お母ちゃんのおっぱい!」と答えるほどおっぱいが好きですよね?特に甘えん坊の子牛なら、しょっちゅうお母ちゃんのおっぱいにしゃぶりついています。これは子牛にとってはとてもよいことですが、お母さん牛の繁殖の面から考えると、ちょっと困ったことなのです。

 赤ちゃん子牛が、1日に3回以上おっぱいに吸い付いていると、お母さん牛は「子育てモード全開」になってしまいます。そうなると、繁殖に気が回らなくなってしまうのです。まじめに言うと、子牛が1日3回以上哺乳すると、子育てホルモンの「プロラクチン」というものがたくさん分泌されて、発情ホルモンの「エストロジェン」をはじめ、繁殖行動に必要ないろいろなホルモンを抑え込んでしまいます。
 その結果、子牛が離乳するまでは発情が弱かったり、受胎しにくかったりという、繁殖経営にとっては不都合な事態になってしまいます。

 ですから、シェパードでは、親付けの自然哺乳形式であれば、母子分離できる哺乳舎に改造して、1日2回だけの「制限哺乳」にすることをおすすめしています。
 改造と言っても難しいものではありません。図を参考に考えてみてください。哺乳させる前には、お母さん牛のおっぱいをタオルとお湯できれいにしてあげましょう。乳の出方もよくなるし、乳首のバイ菌を減らすことで子牛の下痢も減らすことが出来ます。
 それから、子牛を母牛につける前に、一度前絞りしましょう。お母さん牛の乳首の中は「乳管洞(乳頭槽)」という空洞で、ここに古いミルクがたまっていて、少し傷んでいることがあります。これを絞りきるだけで、子牛の下痢のリスクはかなり減少しますよ。

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