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蓮沼浩のコラム
第550話:デキサメタゾンの休薬期間の延長について その2

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2018年12月27日

 今年は4年ぶりに家族とクリスマスを過ごしました。毎年クリスマスは出張先の旅館でニンジンとキャベツかじっていたので、家の暖かさが身に沁みますね。

 前回お話しした、デキサメタゾン製剤の休薬期間延長について小生が一番気になるところは、何故この時期に残留基準の見直しが行われたかということになります。もちろん食品の安全はしっかりと確保しなくてはいけません。非常に重要なことになります。ただ、現場の獣医師としては、現場で実際にこれから非常に難しい判断を治療で求められてくるので、その理由が知りたいのです。昔は製品にもよりますが、静脈注射で2日の規制だったものが、ポジティブリスト制度(平成18年)で4日になり、そして今回7日~12日に変更となるので、大変です。

 曰く、

 食品衛生法(昭和22年法律第233号)に基づき、平成31年1月13日付でデキサメタゾンの残留基準が改正され、引き下げられる予定です。

 これだけの説明では、何故引き下げるのか理由がよくわからないのです。そこでさらに詳しく調べてみると、厚生労働省において食品安全委員会の評価を踏まえて暫定基準が見直されたと書いてあります。筋肉では0.04ppm→0.001ppmと40倍に厳しくなります。脂肪は0.02ppm→0.001ppm(20倍)、肝臓0.04ppm→0.002ppm(20倍)、腎臓0.04ppm→0.001ppm(40倍)などになります。大体20~40倍基準が厳しくなっていますね。

 このように残留基準が引き下げられることから、現行の休薬期間では休薬期間の経過後であっても残留基準を上回ることが想定されるので、休薬期間を延長することになっているようです。食品安全委員会動物用医薬品専門調査会が2017年4月に出した動物用医薬品評価書を確認すると、様々な実験結果がのっております。43ページにわたる読み応えのある内容です。一部突っ込みたくなる内容もありますが、田舎の鼻くそ獣医師は何もいえません。
 さらに調べていくと、EUの基準と今回の結果は大体同じようになっていることがわかりました。ヨーロッパでは家畜の成長促進剤として使われていた歴史もあるようで、基準が相当厳しくなっているようです。来年2月には日EU EPAがあることから、EUの基準に日本も合わせておくことは輸出を考える上では重要なポイントかもしれませんね。ということで、国民の健康を考えるのであれば、今後海外から輸入されてくる食肉はしっかりと日本の基準に合わせていただきたい気持ちはあります。例えばある国では休薬期間が30日の薬品が、日本では60日であったり、日本では使用禁止の薬剤が使われていたりする場合などもあると思います。今後海外からの輸入量はさらに多くなってくると思われます。このあたりの問題はどうしていくのでしょう?色々と調べていると、デキサメタゾン製剤の中には日本で販売されている製剤の2倍の濃度でありながら、何故か休薬期間が1日のものもありました。こりゃ、いかんでしょ。

 今年はこれでコラムは最後になります。来年もほとんど役に立たないけど、1%ぐらいは役に立てるかもしれないコラムを書いていきますのでどうぞよろしくお願いいたします!

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