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笹崎直哉のコラム
膿瘍について考える その1

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2018年12月25日

 牛さんの診療をはじめてもうすぐ3年になりますが、化膿症に対する治療アプローチはなかなか難しいものがあります。切開や排膿のタイミング、その後も経過観察など結構獣医師の頭を悩ませる疾患です。

 牛さんの診療依頼で「片方のアゴが腫れてるんですけど」だったり「モモが大きくなってる」それから、子牛だったら「臍が腫れてる」といった電話の場合は、膿(俗に言う、ウミですよ~)を形成している牛さんが多いです。切開して洗浄した後に抗生物質、消炎剤の投与をしたり、初めは切開せずに何日か薬を注射して経過を見た後に、やっと切開したりといろいろな治療方法がありますよね。投薬をしなくても牛さん自身の力で自然に治ってしまったなんてことも、、、。

 それでは何故膿ができるのでしょうか??原因はやっぱり細菌(バイ菌)です。でも細菌の全部が全部膿を招くわけでなく、種類が限られてきます。しかも細菌じゃなくても化学物資によっても化膿してしまうケースもあります。実際に傷口に細菌が侵入すると炎症を起こし、白血球の1種である好中球が炎症部位に出現します。

 その好中球が組織内で集まると融解が始まり、黄色の液体が溜まっていくのです。これを化膿と呼びます。実はというと、化膿は細菌の感染が全身に回ってしまわないように、感染部位を一部に止めようとする反応でもあります。ですから牛さん自身の健康状態により、自浄作用がしっかりと発揮されれば感染部位はそのまま治ることがあります。その一方で免疫力などの防御反応が低下している場合は、細菌の住み家がドンドン広がり、膿瘍形成を促進してしまうと考えられます。よってこの免疫力が意外にも化膿症においては重要視されるのです。

つづく

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