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松本大策のコラム
子牛の乳首の高さ

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2018年12月17日

 ここんとこ急速に寒くなってきましたね。東日本では雪も多いようです。みなさんのおうちの子牛たちは元気にしていますか?

 ところで、今回は特に人工哺乳の場合の子牛の体高と、ほ乳瓶あるいは哺乳バケツの乳首の高さについてのお話です。簡単な実験ですけど、みなさんトライしてみませんか?

 まず、お水を口にくわえた状態でお辞儀をします。まだお水は飲んじゃダメですよ。その状態で、顔だけをできるだけ上向きになるように上げてみてください。
 はい、よくできました。その状態で口に含んだお水を飲んでみてください。あ、でも無理に飲み込もうとしなくてかまいませんからね。下手したら気管に詰まらせちゃいます。
 ね?飲みにくいでしょ?これは、哺乳動物の食道と気管の位置が関係しています。

 どういうわけか、空気の通る気管の方が、食べ物や水を胃袋に流し込む食道の下に位置するのです。そこで、空気を吸うときには開いていて、水や食べ物を飲み込むときは気管の入り口をふさぐ「喉頭蓋」というフタがあって、水や食べ物が入ってきたことを口の中で感じると、喉頭蓋反射というものが起こって気管のふたを閉めてくれるのです。(下手な図1)

 ところが、最初に試していただいた姿勢をとると、喉頭蓋を閉めてくれる筋肉が、引っ張られて、うまく喉頭蓋を閉じることができなくなってしまうのです。試してみた方、水を気管に引っかけてむせませんでした?これがミルクだったりすると「誤嚥性肺炎」の原因にもなる場合があります。

 実は、子牛の体高に対して、ほ乳瓶の乳首の高さが低いと、冒頭で実験していただいた試験と同じ体勢になって、喉頭蓋反射がジャマされて子牛も気管にミルクを引っかけてしまうのです。

 たかがほ乳瓶の高さみたいですが、こういうところにも気を配ってあげたいですね。

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