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松本大策のコラム
たった1kgの餌だと思ったのに…というお話

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2018年12月10日

 みなさんお元気ですか?順調に身体の各所が痛い松本です。歳はとりたくないねぇ(涙)。

 ところで、今回は表題の通り「たった1kgの餌だと思って甘く見ていると、結構痛いしっぺ返しを食らうよ」というお話です。

 あるコンサル先で、繁殖の成績を向上させるために様々な飼養管理の変更をしていただきました。ビタミン剤の使用プログラムからミネラル剤の変更、生菌剤の使用など様々なことを変更しましたが、最も手応えがあったのが「繁殖用配合飼料」の変更です。

 たった1kgの餌(まあ正確には1.5kg)を変更したら、一月ほどで卵巣の状態から発情発見率や受胎率も改善しました。はっきり言って自慢ですけど、僕の設計した繁殖M(中国物産製造販売)を使っていただいたのです。
 本当は自慢したいのではなく、飼料の考え方をちょっと考えてみていただきたくて、わざと商品名も出しました。僕は設計の時は、「設計料」しかいただかないので、いくら売れても別にお金は入らないようにしています。そうでないと推薦しにくいですからね。

 本題に戻りますが、この農場では数年とてもよい状況が続いたため、別のメーカーの安い繁殖飼料に切り替えたのです(僕の設計は、牛さんの健康のために譲歩しないので高いですからね)。するとしばらくして繁殖成績が低下し始め、さらには足の痛い牛さんまでたくさん出てきました。

 この後コンサルに伺ったときには80%程度の牛さんに蹄病が見られ、受胎率もかなり低下していました。変更した餌が、ルーメンアシドーシス(第一胃の酸性化)を起こしていたのです。これでは繁殖成績どころか、蹄病、下手したら流産なども起こす可能性があるということで、以前の僕の設計したものに変更してもらいました。その後は繁殖成績も元に戻りましたし、次のコンサルの時には足の悪い(といっても削蹄師さんが少しおかしいかな?というくらいで臨床症状は見られなかった程度です)牛さんが1頭だけでした。

 たった1kgちょいの餌でも、このように影響があるのです。飼料を選択する際は、牛さんの系統やら粗飼料の品質や種類、ストレスの状況なども見て決定しなければなりません。
 そんなことはなかなか完全にはできません。それで僕は、なるべくどんな状況下でも正常な第一胃の発酵を行う飼料の設計を心がけているのです。言い訳みたいですけど、そういう設計の条件を満たして、原料の品質も譲らないと高くなってしまうのです。

 だけど考えてみてください。1日に2kg使う餌だとしても(実際は1.5kgね。しつこいけど。)、年間で700kg程度しか使いません。価格は、実際は15円くらい違いますが、たとえ30円違ったとしても年間コスト向上は21,000円くらいです。子牛の機会損失から考えれば、微々たるものです。
 たった1kgの餌が、とても重要なカギを握っているということを頭に入れておきましょう。ちなみにこの農家さんは先日、安福久母体に幸紀雄で採卵して40個よい卵がとれたそうです。

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