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蓮沼浩のコラム
第544話:アニマル・ウェルフェア その4

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2018年11月15日

 前回のコラムでは新聞報道が気になったので、ちょっと寄り道してコラムを書きましたが、再びアニマル・ウェルフェアについて書いてみようと思います。今回は5つの自由の中の2番目についていろいろ思う事を紹介いたしますね。

②恐怖及び苦悩からの自由

 牛さんが恐怖から自由であること。これは農家さんだけでなく、我々獣医師にとって非常に重要なポイントになります。獣医さんは病気の牛さんを治療してあげようと思っているのですが、彼らにとって小生達獣医師は恐怖の的以外の何物でもありません。人間では考えられないような太い注射針を刺したり、手術をしたり、直腸から手を突っ込んだり、がっちりと保定したりと、とにかく獣医さんがする処置は牛さん達にとっては苦痛以外の何物でもない可能性があります。なので、とにかく捕まえたり、治療を行ったりする時は牛さんを怖がらせないようにすることが非常に重要になります。小生もやさしい声をかけたり、ゆっくり近づいたり、撫でてあげたりと怖がらせないことに相当気を遣います。しかし・・・・こちらの思いとはうらはらに、牛さん大暴れなどということもありますが・・・。

 実は牛さんを怖がらせないで落ち着いた状態で診察や処置をするということは、獣医さんのテクニックの中でも最重要テクニックとなります。簡単そうに見えて実は非常にレベルが高く、様々な牛さんに対応するのが難しい技術ですが、日々技術の向上に邁進しています。時々人を見た瞬間、恐怖で逃げまどう牛さんもいます。なかなか難しいですが、少しでも牛さんを怖がらせないように、日々の飼養管理やもちろん獣医さんの治療も意識して行いたいですね。彼らのおかげで生活できているのですから、怖がらせてはいけませんよね。

 ただ、恐怖からの自由は良くわかるのですが、苦悩からの自由に関してはちょっと考えてしまいます。牛さんの苦悩。はたしてどんなものなんでしょう?残念ながら小生には彼らの心情をうかがい知ることはできません。ひと様のように、彼らなりに色々悩んだりしているのかなあ~~~。

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