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笹崎直哉のコラム
ルーメンについて考える その5

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2018年11月13日

 それではルーメン環境を悪化させる要因について考えていきましょう。まずはルーメン内のpHが低下した状態について。これをルーメンアシドーシスと呼びます。急性のものと慢性のもので症状が様々ですが、重篤な疾病を招きかねません。いかにして牛さんのルーメン環境に急な変化を与えず牛さんを育てるかがポイントになってきます。

 このルーメンアシドーシスの引き金となるのはルーメン内で作られる、揮発性脂肪酸(VFA)や乳酸が大量に産生されることですが、これは牛さんが食べるエサが発酵されやすいかどうかで決まります。ルーメンアシドーシスは発酵されやすく、発酵スピードが上がりやすいエサの給与で起こりがちです。このときルーメン内のpHは正常範囲の6~7下回り、酸度の強い環境に変化してしまいますのでルーメン内で生息している微生物も環境の変化に対応できなくなり死滅してしまいます。そうすると、エンドトキシンが回って、肝炎であったり、腸炎であったり沢山の病気が、、、嫌な予感しかしません、、、。昔から「牛さんは配合飼料食べ過ぎるとすぐ体調を崩すよ」と言われます。配合飼料に含まれる麦、トウモロコシ、ソルガムといった炭水化物は発酵されやすく、ルーメン内で急速に分解されます。反対に粗飼料などの茎や葉に含まれる炭水化物は繊維質(セルロース、リグニン)が大半を占め、ルーメンではゆっくりと発酵されます。かといって胃にやさしい粗飼料だけ与えるなんてことは肥育牛であればもってのほか、、、。

 そこで分離給与でエサをあげている方にお聞きしますが、エサを与える順番を意識されていますか?同時に与えるとどうしても配合飼料を好む牛さんが多いものです。

 ここで粗飼料、配合飼料の順でエサを与えるだけで、ルーメン内のpHの低下を少なくでき、ルーメン環境を崩しにくい状態へとコントロールできます。これは前回お話したルーメンマットに関連しますが、しっかと繊維質の層ができた状態で配合飼料を与えましょうということです。理想は粗飼料を完食したのを確認できてから配合飼料を与えるのが良いのですが、最初からは難しいと思いますので、順番だけでも変更してみてがいかかでしょうか。

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