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松本大策のコラム
お母さん牛も歳を取るんだ!

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2018年10月29日

 松本です。最近、肩は痛いし腰にはくるし、おまけにすぐに太るのになかなか痩せにくくなってきました。どこに行っても「先生、太りました?」と聞かれます(涙)。どうしても、歳とともに代謝が悪くなってきているのでしょうね。これは、みなさんのお家のお母さん牛にも言えることです。

 若い頃は、運動量も多く、まだ体の発育も続いていますから、タンパク質もカロリーもたくさん必要なのですが、3産以上にもなってくると、身体の発育が終わりますから、若い頃と同じ飼い方ではタンパク質が余分になることが多いのです。

 余分なタンパク質は老廃物のアンモニアになって、腎臓から排泄されるまで全身を回ります。これまで幾度となくお話ししていることですが、アンモニアは猛毒なので、オシッコから捨てるのです。

 しかし血液中のアンモニア濃度が上がりすぎると、排泄が間に合わなくなり、卵胞液中のアンモニア(正確にはアンモニアが分解されてできる尿素窒素)が増加してしまいます。その結果、卵胞内の卵が死滅した状態で排卵されるので受胎しないのです。ETの採卵の時、正常卵率が低い時もアンモニアの影響を受けた可能性があります。

 それから、子宮の中は弱アルカリ性でなければ受胎率が低くなるのですが、血液中のアンモニアが多すぎると、アンモニア自体はアルカリ性であるにもかかわらず、子宮の中を弱アルカリ性に保とうとする酵素を阻害して子宮の中のPhを酸性にしてしまうため、受胎率はやはり低下してしまいます。

 タンパク質の過剰は、卵胞嚢腫(地域によってはカモ牛と呼んだりします。卵胞が排卵せずに大きくなった状態です。)の原因にもなることがありますから、当てはまる方は、歳をとったお母さん牛の餌を見直してみてはいかがでしょう。

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