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松本大策のコラム
人工授精のとき気をつけてほしいこと

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2018年10月26日

 また大きな台風が来てますね。強風域に入らないからといって安心してはいけません。牛さんにとっては、気圧の変動だけで十分ストレスなのです。もちろん、野生の牛さんでは十分耐えられるのだと思いますが、不自然にたくさんの穀物を食べさせられている肥育牛や乳牛、頭数密度の高い繁殖牛などではストレスに上積みされるわけですから、気圧の変化も堪えるというものです。生菌剤や酵母製剤、毒素吸着剤などで第一胃を護ってあげましょうね。

 ところで、今回は「子宮内膜炎」のお話です。それも、無意識に人間が作り出している子宮内膜炎です。

 まず、人工授精時に使用するお水は清潔なものを使いましょう。山の沢からパイプで引いている水や、井戸の水などには、ばい菌がうじゃうじゃいる可能性があります。人工授精の時に、こういった水を使うと、消毒薬を入れたぐらいじゃこれらのばい菌を完全に殺すことができませんから、これらのばい菌を授精器具によってわざわざ無菌状態の子宮の中に運んでしまうことになります。
 これによって、人為的に子宮内膜炎を起こさせてしまうのです。ですから、人工授精の時に使う水は、ポリタンクでおうちから運ぶようにしましょう。

 それから、人工授精の時に膣鏡もシース管カバーも使わない方を見かけます。これは絶対にやめましょうね。というのも、外陰部から膣の内側5~10cmくらいは糞便中などの雑菌がうじゃうじゃいます。素の授精器具を使うということは、この雑菌のいるところを通していくわけですから、授精器具に付着した雑菌を子宮の中に運び込んでしまうのです。ですから、必ず膣鏡で授精器具を膣に触れさせずに、子宮外口に挿入するか、シース管カバーで雑菌のいるところを通過した後に、子宮外口付近でシース管カバーを破って、衛生的な授精器具を子宮の中に入れてあげなければなりません。

 また、お産の時、子供が出てくる前に床にノコクズなどの敷料を入れている方もいらっしゃいますが、これもお勧めできません。子牛が生まれるまでに胎膜が何度も陰門部から出たり入ったりします。この時に敷料が付着して、敷料に付いたばい菌ごと子宮に運んでしまうからです。
 こういうことを防ぐために、分娩房の床はコンクリートで刷毛目をつけて滑り止めしておき、消毒薬でしっかり消毒しておき、子牛が完全に産まれてから敷料を入れた方がよいと思います。

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