(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第204話「アフリカ豚コレラと豚コレラ③」

コラム一覧に戻る

2018年10月3日

実は豚コレラにはワクチンがあります。なぜ日本では使っていないのでしょうか。

国内のワクチン使用歴は2000年10月まで。それ以降は原則としてワクチンの投与は禁止とされています。ワクチンを投与しようとしても家畜伝染病予防法にて「都道府県知事の許可が必要」とされています。つまり畜主が勝手にワクチンを投与するのは違法ということです。

豚コレラのワクチンが悪いわけではありません。
日本でも豚コレラが猛威をふるっていた時期にはワクチン接種が一般的に行われていました。そのワクチンの効果もあり、この病気は日本では激減したというすばらしい実績があります。

しかしながらワクチンを接種すると、そのウイルスに対する抗体が体内で形成されますよね。そうすると、「ワクチン接種のせいで抗体価があがっているのか、野生ウイルスに感染したせいで抗体価が上がっているのかがわからなくなる」ということが生じてしまいます。
もちろん血液や鼻汁などの検体からウイルスの遺伝子検査をすれば、ウイルスそのものがいるかどうかは分かります。しかし、抗体検査に比べて費用もかかる上に時間もかかってしまいます。

国内の豚のほとんどで抗体価が高い状態を継続してしまうと、感染豚がいても発見が遅くなるだけでなく、感染の疑惑が完全にはぬぐえないわけです。そんな状態では豚コレラ清浄国として国際機関(国際獣疫事務局:OIE)の認証を受けることができなくなります。

そういう理由で現在の日本ではワクチン接種は中止され、原則として感染・発症豚は摘発し淘汰することとなっているのです。
つらいことですが、「安心・安全」なジャパンブランドを守るための措置でもあるわけです。

|