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笹崎直哉のコラム
ルーメンについて考える その1

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2018年10月2日

 牛さんにとってルーメン(第一胃)はとても大事な臓器で、ルーメンを丈夫にできれば、立派な牛さんに育っていくことは間違えないでしょう。鼓脹症、ルーメンアシドーシス、第一胃食滞、パラケラトーシスなど、ルーメンそのものの疾患やそれを起因をした病気など多様に渡り、非常に興味深い臓器ですよね。すこしルーメンの機能にについて考えてみましょう。ざっくりとした内容になりますが、ご了承ください(汗)。

 さてルーメンでは何が作られるでしょうか?

ルーメンでの主要な発酵産物は、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのVFA(揮発性脂肪酸)、アンモニア、および二酸化炭素、メタンなどのガスがあります。

★VFAはルーメンで吸収され、第三胃でも吸収が続き、十二指腸に至るまでにルーメンでの濃度の10~20%に減少します。ルーメンでのVFAの吸収は、ルーメン内への酸の集積を防ぎ、ルーメン発酵を継続させるのに好都合になります。吸収されたVFAは、エネルギー源として利用されるほか、脂質の合成、糖新生などに使われます。

★では電解質はどうでしょうか?Na、K、クロール等の電解質はルーメンおよび第三胃で吸収されます。またMg、Ca、HPO4イオンなどは、主として第四胃で吸収されます。
加えてルーメンには牛さんの唾液に由来するNaの量が多いのですが、ルーメンおよび第三胃から能動輸送で吸収され、再利用されます。

★ルーメン発酵で産生されるアンモニアは、微生物に再利用されますが一部はルーメンから吸収され、肝臓で尿素に変換されます。尿素は尿中へ排泄される一方、一部は唾液から、一部は血液を介して再びルーメンに入り利用される。

発生したルーメンガスは、あいき反射で経口的に排泄されるほか、ルーメン内で代謝されることもあります。

つづく

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