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戸田克樹のコラム
第202話「アフリカ豚コレラと豚コレラ①」

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2018年9月19日

岐阜県の豚コレラ発生に関するニュースに衝撃を受けた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回の国内発生は実に26年ぶりとのこと。養豚場から7km離れた場所で発見された野生イノシシの死体からから、豚舎内で検出されたものと同型のウイルスが検出されたというニュースが出ていました。野生のイノシシが養豚場にウイルスを持ち込んだ可能性が高いようです。

この疾病の恐ろしいところは「強い感染力」、そして「高い致死率」の2点です。
いかに恐ろしいかは法定伝染病として登録されているところからもうかがえます。発生が確認されたらすぐに国に通報し感染豚の速やかな摘発と淘汰を実施しなければいけません。治療ではなく淘汰です。農家さんへのダメージは計り知れません。

この豚コレラは、ついに中国までその感染域を広げてきた「アフリカ豚コレラ」とはまったく異なります。
アフリカ豚コレラ:アスファウイルス(二本鎖DNAウイルス)
豚コレラ    :フラビウイルス(RNAウイルス)
と、感染するウイルスがまったく異なるのです。

しかしながら、同じ「豚コレラ」とついているように、症状は類似しているものが多いです。臨床現場でこの2つを見極めるのはほとんど不可能でしょう。発熱、皮下出血、チアノーゼ、下痢、血様便、神経症状、など一般的に見られる症状です。

熱や下痢は飼育現場ではよく見られる光景ですから、この2症状だけでは豚コレラかも?と疑うのはこれまた難しいですね。しかも、今回のケースでは下痢は確認できなかったようです。
「高い致死率」とあるように、急死するケースが多いのも特徴です。もし豚舎内にウイルスが侵入してしまったら、1日に何十頭も死亡、あるいは上記のような症状を示す個体が何十頭も確認されるという恐ろしい事態に陥ってしまいます。

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