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笹崎直哉のコラム
分娩時の子宮捻転が増えてきました④

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2018年9月18日

 胎子回転法による整復が不可能な場合があります。子宮捻転が180℃~270℃と高度なケースです。さらに、お母さん牛が起立不可能であり、産道に手指挿入できないときですは母体回転法を選択し、整復を試みます。母体回転法は人員を要し(3人以上)、広い場所を選択し以下の手順で行います。

 ②頑丈な丸太に前肢・後肢を別々に結ぶ(頭部はしっかりと確保)

 ③お母さん牛を捻転の同一方向に急速に回転させる

 ④回転のたびに膣または直腸内検査により経過を確認

 ここで注意事項です。子宮捻転が時計回りであったら、お母さん牛も同様に時計回りに回転させなくてはなりませんので、お気を付けください。

 また別の整復方法として後肢吊り上げ法があります。お母さん牛の後肢を重機(ショベル)で持ち上げ、その都度胎子回転法で整復していくやり方です。上記2つの方法で整復不可能な場合は帝王切開を選択します。整復前の段階において、捻転が重度である、胎子のバイタルサインが弱かったり、胎盤が剥がれはじめ、羊水が赤く染まり始めている、などの場合においても帝王切開を選択したほうが良いと思われます。

 実際に私は分娩期のお母さん牛で180℃の子宮捻転の症例に出会ったとき、分娩部屋が狭く、すでにお母さん牛は疲れ果てて、脱水していました。胎子のバイタルサインも微弱であったので、すぐに帝王切開を実施しました。先輩獣医師も応援に駆けつけてくれて、無事に母子ともに救うことができました。帝王切開を終え、振り返ると判断力が問われる疾病だなと痛感しました。どの方法を選択するか、今後も試されると思います。今後も細心の注意を払い、診療していかなければと痛感しました。

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