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松本大策のコラム
ビタミンAと亜鉛(ビタミンコントロールは必要か?) その6

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2018年9月10日

 さて、いろいろと引っ張ったあげくに常識外れのようなことを書いてきましたが、ここでみなさんには「ものの見方」について、少しお話ししようと思います。

 僕の試験は、あくまで気高系を中心とした二元交雑もしくは三元交雑の和牛去勢牛に関するものであることを最初に確認して下さい。このあたりがいい加減な情報が多いのです。ですから、そのまま「田尻系の雌牛」に当てはめていいかは、さらに検討が必要です。僕自身の考えでは、ビタミンAに関する生体内反応、脂肪蓄積のメカニズムなどに、さほど大きな(雌は雄よりも不飽和脂肪酸を蓄積しやすい傾向がありますが)差異はないと考えていますが。

 活字になった情報、さまざまな数字、これらはとても信頼性が高く見えます。しかしながら、統計学的に十分な検討がなされていなかったり、因果関係の試験をしていなかったり、頭数が不十分であったり、というようないい加減な情報がたくさんあります。
 信頼性が比較的高いとされる「論文」でさえ、牛の品種や系統についての考察がなされていなかったり、誤った統計手法を用いて分析していたりするものもたくさんあります。

 みなさんに言いたいのは、「自分の目の前の牛さんが事実」だよ!ということです。どんなに偉い先生が「右」と言っても、牛さんが「いや左だよ」といったら左が正解です。

 さて、ここでびっくりどんでん返しをしましょう。僕の試験は数年にわたっているものです。そこで年度別に結果を見てみると、脂肪交雑の特に良い年度がありました。そしてそこに試験牛も多くいたのです。そこでその年度に限って、再び同じ分析をしました。
 すると、「導入直後より出荷まで毎月ビタミンAを100万単位注射した牛群と、非投与の牛群の間に、脂肪交雑に関して差がない」という結果になりました。このように長期にわたる試験をひとまとめにした論文も多く、分析が不足していると言っていいでしょう。

 今回のまとめでは、「導入直後より出荷まで毎月ビタミンAを100万単位注射した牛群と、非投与の牛群の間に、脂肪交雑に関して差がない」というのが正式な分析結果でしょう。でも、みなさん、ビタミンAの投与が、脂肪交雑他の肉量・肉質に影響を与えることがないというだけでも、ビタミンAの給与量や血中濃度に一喜一憂する必要もなく、ビタミンA欠乏症による被害(全国で数十億円に上ると、以前農水省の方からうかがいました。) を防ぐことが出来た方が良いと思いませんか?

 あと、未発表ですけど、口田先生の大規模官能調査では、ビタミンA投与牛の方が非投与牛よりも美味しいという、食べた人(五百人)の調査結果が出ています。昔、森田屋さんの先代の社長さんも同じこと言ってましたね。

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