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笹崎直哉のコラム
分娩時の子宮捻転が増えてきました②

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2018年8月28日

 まず発病の時期を考えてみます。まずは妊娠中期~後期で発生する子宮捻転についてです。
 この時期では、捻転部が子宮体で起きていることがほとんどです。膣鏡を用いた検査では状態の変化を見つけるのが困難で、直腸検査で発見し、確定診断となります。直腸検査では子宮広間膜の状態を指標にすることができます。子宮広間膜は腹膜の一種で、卵管を上縁として骨盤から子宮までの範囲がシート状に突出しています。子宮の位置が変動するとそれに伴い、広間膜も変化します。

 例えば右の子宮捻転(時計回り)では右側の子宮広間膜が下方に強く牽引され、それに対して左側の子宮広間膜は子宮の上方を横断し、緊張しているのが分かります。この時期の捻転はお母さん牛の症状が分かりにくく、軽度であることが多いようです。なので、胎子が死亡し、気腫胎、浸漬またはミイラとなって捻転の発見が遅れることがありますので結構厄介です(汗)。

 では分娩時期に発生する捻転はどうでしょうか?この時期になると捻転は尾側である子宮頚部で発生します。農家さんより「陣痛が長時間続いているのに分娩しない、分娩遅延しているお母さん牛がお腹を蹴る」といった連絡がくるケースでは、捻転を頭に入れておく必要があります。膣鏡を用いた検査では、らせん状に捻れたヒダがみられます。実際に消毒した後、産道に手を入れて触診することでさらに形態の変化が分かりやすくなります。重度の捻転例では膣腔が狭くなり、外子宮口まで手を入れることができません。

 また外陰部にも着目してみてください。子宮捻転ではお母さん牛の外陰部が非対称性に浮腫んでいることがあります。一般的には捻転方向とは反対側の外陰部が腫れるといわれているので、捻転方向の手掛かりになります。

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