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笹崎直哉のコラム
分娩時の子宮捻転が増えてきました①

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2018年8月21日

 最近では難産で呼ばれたときに子宮捻転を発症している牛さんが多くなったような気がします。半年に1回あれば多い方かなというイメージでしたが今年の夏シーズンは毎月出ています。私は本症例は3頭出会い、その3頭とも「産道が狭くて、胎子の足がよく触れんよ。あと破水もよく分からなかった。」といった電話をもらっています。
実際に産道に手を入れると子宮頸管はしっかりと開口しているのです。しかしやや奥に進むと「しわ」のようなものに触れ、産道が狭くなり捻じれを確認しました。膣鏡で開くとこのようになります。

膣鏡で奥までしっかりと観察してみれば分かり易いですし、直腸検査でも子宮の形態変化を比較的容易に判断できます。この子宮捻転の原因として考えられるのは様々ですがおおよそ4つになります。

①妊娠の進行に伴い子宮が第一胃などの消化管に圧迫された場合
②エストロジェン、リラキシンといったホルモンの作用で子宮頚管や子宮間膜などの支持組織の弛緩した場合
③妊娠牛の起伏時の転倒、急斜面におけるつまずきおよび墜落を起こした場合
④早期破水及び、過大子の頚管部産道の通過障害

これらを踏まえ、発病の時期(分娩期?妊娠中期~後期?)、発症してからの時間、捻転の程度、母牛や胎子の一般状態を考え、どの方法で治療を開始するのが最適かを判断するのが肝になるのでかなり難しい症例です。次回は3症例の容態や治療内容を実際に紹介していきたいと思います。

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