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戸田克樹のコラム
第198話「子牛の下痢が悩ましい!⑳~ロタ・コロナ~」

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2018年8月15日

細菌が原因の下痢の場合、先に挙げたクロストリジウムは細胞壁の厚い「グラム陽性細菌」と呼ばれるタイプですのでβラクタム系の抗生物質が効きますね。大腸菌やサルモネラ菌は細胞壁がほとんどない「グラム陰性」と言われるタイプなのでテトラサイクリン系やキノロン系などがよく効きます。

ところで、下痢を引き起こすウイルスといえばロタウイルスやコロナウイルスが代表選手でしょうか。
ロタウイルスは教科書的には生後数日~14日目くらいまでに感染する危険性があるとされています。
成牛のロタウイルス抗体率は90%を超えているとの報告もあり、ほとんどの農場はロタウイルスが常在していると思って問題ないでしょう。免疫力のある成牛での発症はまずありません。

コロナウイルス感染では下痢だけにとどまらず、別名「冬季赤痢」といわれる血便ももたらします。

名前のとおり、寒い時期に集団発生的な赤痢をもたらす怖いウイルスです。このウイルスの特徴は下痢だけでなく発熱、鼻汁、発咳といった呼吸器症状の流行も引き起こしうることです。さらに、子牛だけでなく成牛での感染・発症(呼吸器症状含む)の報告もあるので、大人になっても気が抜けません。

これらのウイルスに関しては下痢予防のワクチンが発売されています。
分娩前の母牛に投与して初乳を飲ませ、移行抗体として子牛に摂取してもらうタイプです。
ウイルスには治療よりも予防で対抗!ですね。

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