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戸田克樹のコラム
第193話「子牛の下痢が悩ましい!⑰~大腸菌との闘い~」

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2018年7月11日

前回はさまざまな病原体を列挙していきましたが、今回からはそれぞれにフォーカスを当てて、より詳しくみていくことにしましょう。

今回は「大腸菌編」です。
大腸菌は実は健康な牛さんの腸管内にもいます。成牛の糞便にももちろん含まれています。
でも、成牛はほとんど大腸菌には感染せず、いわゆる善玉菌や免疫機構がうまく働いてくれるため、体内で暴れまわることはないのです。大腸菌といえば、0157が有名ですが、これ以外にもO103、O111、O119といったいろいろな種類が存在しています。
病気をもたらすこれらの大腸菌をまとめて「腸管毒素原性大腸菌」と称します。

生後間もない子牛がまっさきに攻撃を受けるのがこの大腸菌でしょう。
なぜなら、お母さんの糞便中にいるからです。完全に除去することも不可能です。
床に散らばった、あるいは乳房に付着した大腸菌が口や粘膜から容易に子牛の体内に侵入してしまいます。

大腸菌との闘いは生後2日から始まっており、1~2か月齢程度まではその戦いが続きます。

初乳が飲めていない場合、生後数日で下痢を発症すればおそらくその原因は大腸菌でしょう。
生後7日程度で下痢をした場合、移行抗体が少し減り始める時期なので、その原因は大腸菌の可能性が高いです。
生後1か月程度で下痢をした場合、移行抗体は半分程度に減少しており、子牛自身の免疫細胞ががんばらないといいけない時期に来ているので、その原因は大腸菌かもしれません。

と、未熟な子牛の時期の下痢は大腸菌の感染による可能性が非常に濃厚というわけです。

早期母子分離や群編成でストレスがかかる時期は免疫機構も著しく弱まるので、非常に注意が必要です。簡単に感染、発症してしまう危険性があるのです。
 
 
 
 
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