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松本大策のコラム
日本型の畜産に誇りを持とう

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2018年6月15日

 消費者のみなさんが、牧場と聞いて連想するのはどのような風景でしょうか?まあ、まず思い浮かべるのは、アルプスの少女ハイジの世界。なだらかな丘に広がる広大な草原。ホルスタインがゆったりと草を食んでいる。そういう風景が多いのではないでしょうか。

 以前、消費者団体の方に「本当の食の安全とは?」という演題で講演をしたことがあります。やはりそのときも、意識高い系の消費者の方から「やっぱり広い草原で草を食んでいる牛さんの方が、環境にも優しいし、牛さんものびのびして美味しそう。」との発言がありました。
 僕がまずお答えしたのは、「そういう牛さんを食べたことありますか?」です。だって、好みの味は、好き好きかもしれませんけど、グラスフェッド(草で肥育した牛さん)は獣臭が強くて、日本人にはあまり受け入れられません。日本人だけではなく、食べてもらうと日本型のグレインフェッド(穀物肥育)のお肉の方が風味が良い、という答えが多いのです。

 それから、環境に優しいという認識ですが、土壌が還元出来る牛さんのオシッコなどの窒素排泄物は、1ヘクタールあたり1.7頭分程度なのです。広い(広く見える)放牧場でも、一目で牛さんがいっぱいいる、と認識される場合、完全に土地が窒素を処理出来る頭数を超えています。つまり、経営に見合う頭数を放牧するためには、本当に広大な土地が必要なのです。そうでなければ、見た目は牧歌的なのんびりした光景ですが、その裏で深刻な土壌汚染が進んでいるわけです。
 それに比べると、畜舎内での飼育では、おが屑などで糞や尿を吸着させて、その後集めて堆肥舎で、熟成発酵し余分なアンモニアや窒素を処理した後に有機肥料として農地に還元することが出来ます。

 「でも牛さんにとっては、広い土地でのびのびしていた方が幸せでしょ?」と言われるかもしれませんが、オーストラリアやアメリカの放牧形式の中では、人の眼が届かず、死んでミイラ化した頃に見つかるケースも少なくないのです。
 畜舎で飼育している牛さんは、外敵や悪天候からも護られていますし、上げ膳据え膳でご飯の用意もしてもらえています。背中がかゆいときは掻いてもらえるし、きちんと管理されている農場では、牛さんはゆったりと座ってにどがみしているし、牛さんに直接お話を伺ったわけじゃありませんけど、それはそれで幸せなのだと思います。「しあわせ」にもいろいろな形があるでしょ?
 うちのニャンコも、外に自由に行き来させていたことは、次々と交通事故に遭ったり、毒を盛られたりで平均寿命は2年ほどでした。亡き家内の意見で、外に出さない家ネコにしたところ(僕はそんなの自由がないと反対したのですが)、ネコ自体そこまで外にこだわっておらず、のんびり生きてもう20才です。

 日本型の舎飼いは、これはこれでしっかりとした「動物福祉」の実現をしていると思います。誇りを持って説明しましょう!
 
 
 
 
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