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松本大策のコラム
危機管理について考えてみる

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2018年4月16日

 熊本大地震から2年ですね。

 多くの人命が失われ、建物あるいは地域全体にたくさんの被害がでました。改めて被害に遭われた方、残された方々の上に神さまの慰めと祝福がありますようにお祈りいたします。

 この機会ですから、みなさんもいろいろな「危機管理」について考えてみませんか。人間は、危機は徐々にやってくると思う傾向があるようです。地震なんてそう来ないだろう、台風が近づいても大した被害は出ないだろう、自分は健康に問題はないだろう、など様々な面で「何か兆候があって、徐々に悪化する」と考えがちなようです。

 そうでないと不安で生きてられないよ!という面もあるのかもしれません。しかし、不安から目を背けることは、本当の「安心」ではありません。きちんと不安をいだき、それに備えることこそが本当の安心なのです。

 災害に際しては、 非常持ち出し袋を用意しておくとか、家族との待ち合わせ場所を決めておくとか、そういうことはよく耳にしますね。でも、僕たちは、家族以外にもたくさんの命を預かっている仕事です。
「非常事態に家畜どころじゃないだろう!」と言われるかもしれませんし、確かに人命に勝るものではありません。しかし、家畜に飲み水くらいは用意しておく(農業タンクを丈夫な棚の上に設置して水を確保しておく)とか、いや、非常時に家畜をどうするか?を考えておくだけで違うと思います。

 大きな災害の時、家畜をそのままにする方は、それはそれで牛さんのような巨大な生き物を放つと、人間にとって危険が及ぶかもしれませんもんね。でも、それなら、その覚悟をしておいた方がいいと思いますし、「いや、人間だけ逃げるのは卑怯だ」と言って家畜を放す方は、それはそれで考え方だと思います。しかし、その場合も自分の家畜が万が一人間に危害を及ぼした場合の覚悟はしておかなけばいけないと思います。

 人間の考え方は、人それぞれですし、「真理」と言えるほどのものはどこにもないでしょう。あえて、動物好きが高じて獣医師になった僕の考えを言わせていただければ、僕自身は牛さんに泣きながら謝っても放さない方を選びます。自分の命ならいざ知らず、人様に危険が及ぶようなことはしてはならないと考えているからです。牛を飼って、大きな動物に慣れている方は「怖い」とは思わないでしょうが、例えば子供なんか牛さんのような大きな動物が目の前に現れると、たとえ大人しくて優しい牛さんだったとしても、恐怖のあまりに、川に落ちるとか崖から落ちるなんてことがあるかもしれません。

 動物の命の大切さを、人一倍ご存知の牛飼いさんだからこそ、何かあった時の「痛みを伴った覚悟」をしておくことをお勧めします。

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